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東洋機械金属 代表取締役社長 田畑 禎章 氏

中・大型ダイカストでEV需要を迎え撃つ

射出成形機とダイカストマシンで中・小型を得意とする東洋機械金属。田畑禎章社長は「さらなる成長のためにポートフォリオを変革する」と力強く語った。足元の射出成形機市場は軟調だが、EV化による小型アルミ部品の増加で型締力1000㌧前後のダイカストマシンが好調。1250㌧までのダイカストマシンを手がける同社には追い風で、好機を逃さずダイカストの売上比率を30%から40%へと高めることを狙う。2025年は100周年のメモリアルイヤー。節目の年に本社で新たな中・大型機専用の組立棟も稼働させ、飛躍を目指す。

――足元の景気は。

「全体的にはやや向かい風で、特に射出成形機が良くありません。中国と米国の落ち込みが背景です。そこで来年度から始まる新中期経営計画ではビジネスポートフォリオの変革を図ります。射出成形機は今まで通り成長を目指しつつ、ダイカストマシンにさらなる比重を置く。ダイカストマシンの売上比率を26年度までに現在の約30%から40%へ高める計画です」

――ダイカストの成長エンジンは何ですか。

「EV化で部品構成がガラリと変わり、ちょうど我々の機械の型締力に合うサイズのアルミパーツが登場してきました。具体的には車載ECUの筐体やセンサのハウジング、バッテリケース、eアクスル等の非エンジン系部品です。もともと自動車向けダイカストはエンジンブロックの鋳造に使う型締力3000㌧級の大型機が主流で、我々の領域ではなかった。しかし前述のアルミ部品は多くが1000㌧前後の機械で鋳造されます。元は350㌧クラスをお使いだった我々の小型機のユーザーも続々と中・大型機の領域の仕事へシフトしており、中・大型機需要が確実に高まっています。EVの中身は内燃機関車と違いアルミだらけ。その分チャンスがあります。より大型のダイカストマシンの開発も進めています」

――本社に新たな工場棟も建設中です。

「建屋は今年中に竣工し、100周年を迎える来年に稼働開始予定。引き合いが増えた中・大型機の組立に特化することで納期の短縮を図ります。また新たなサービス部品倉庫も今年から稼働しており、サポート体制もより厚くなりました」

――射出成形機で有望な市場はありますか。

「射出成形機もやはりターゲットは自動車業界。中国市場では従来、携帯やPCなどの電子機器や検査キットなど医療分野を得意としてきました。しかし今はやや落ちているとはいえ、中国のEVマーケットは巨大で需要も底堅い。まだまだ伸ばす余地があると思います。自動車分野の知見が豊富な人員を現地に配置するなど体制を強化中です」

■気鋭の機種が続々

――昨年発表の射出成形機「Si-7シリーズ」は久々のモデルチェンジだとか。

「マイナーチェンジを除けば10年ぶりの刷新。長い歴史のなかで培った最新技術の数々を盛り込んだ、現時点の集大成です。可塑化(樹脂の溶融工程)では、金型を腐食させるガスの発生を抑える新スクリュを標準装備とし、不良数や清掃回数を減らします。また当社別装置との組み合わせで必然的に発生するガスにも対応します。また昨今は、SDGsの観点で樹脂もリサイクル材が増えていますが、粒のサイズがバージン材と違い均一でなく成形時にムラが出やすい。これを成形機本体で解決する技術も発表しました。加えて樹脂の粘度を監視し自動で温度調整する機能もあります。まだ途上ですが成形機のデータをクラウドへ上げ、国内外から参照することで故障の早期復旧につなげる機能も搭載予定です」

――ダイカストマシンでPRに力を入れる機種は。

「『BD-V7EXシリーズ』です。射出時の加速度が100Gと私の知る限り世界最速で、しかもそれが標準装備。高速で充填できるため薄物や長物などダイカストが本来苦手な形状の部品も品質良く成形できます。また電動と油圧のハイブリッド機である『Ds-EX2シリーズ』もオンリーワンの機械です」

――詳しく教えてください。

「一部機能を電動化したダイカストマシンは他社にもありますが、メインの射出機構と型締め機構の両方を電動化したのは我々のDs︱EX2だけ。金型内で圧をかけ製品を作り込む『増圧』という工程がありますが、増圧速度を多段式に可変できるためダイカスト的にかなりシビアな製品でも高品質に成形できます。省エネ効果も高く脱炭素にも効果的。昨今は購入する機械を電動に絞っているお客様もいます。我々は古くから先駆けて電動機を開発してきました。世界的にはまだまだ油圧機も多く、入れ替えの促進も行っていきます」
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油圧ダイカスト機「BD-V7EXシリーズ」は型締力1250㌧まで展開。EV化で800―1250㌧級の需要が好調という

■内製化率が提案力に

「Customers' Value Up」を標榜する東洋機械金属は、顧客のカスタマイズ要望に極力寄り添う営業を重視する。それが可能な理由を田畑社長が教えてくれた。「我々の内製化率は業界でもトップと自負しています。だからこそ柔軟なカスタマイズも可能で、故障要因もつかみやすく手厚いアフターサービスを提供できる。他社にない強みだと思います」

(2024年3月10日号掲載)