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UBEマシナリー ダイカスト事業本部 ダイカスト・押出企画部 部長 山根 隆 氏

国内唯一のギガキャスト機を上市

EVが世界を席巻するにつれ、自動車のボディを一体成形する「ギガキャスト」が大きな注目を浴びている。先鞭をつけたのは米・テスラで、ギガキャスト対応の超大型ダイカストマシンを手がけるメーカーも海外勢が大半だ。そのなかにあって唯一の国産ギガキャスト機を開発したのがUBEマシナリー。すでにリョービが導入を決めるなど大いに注目を集める。xEV化に伴う需要の変化やガキャスト対応機「UB6500iV2」の開発経緯を、ダイカスト事業本部ダイカスト・押出企画部の山根隆部長に聞いた。

――ダイカストマシンや押出プレス機を手がけています。

「我々のダイカストマシンは様々な部品製造に使われます。自動車ではエンジンやeアクスル、ボディ・シャシーの部品など。ヒートシンク部品やエスカレータステップ等、電気部品の生産にも使われます。少し古い数字ですが世界シェアは7%ほど。押出プレスはサッシなどアルミ建材の生産のほか、自動車を含む輸送機部品などの製造に使われます。現在は国内唯一の押出プレスメーカーで、自社調べでは国内設置台数の6割が我々の押出プレス機です」

――各々の景況感は。

「まずダイカストマシンですが、ダイカスト部品の約9割を占める自動車業界でxEVの設備投資が活発化しています。地域で言えば中国、韓国、北米、インドですね。逆に内燃機関車の設備投資はインドを除き低調。コロナ禍の終焉で自動車生産は全世界的に拡大していますが、拡大理由はもっぱらxEVによるものと言えます。翻って押出プレス事業も、建材向けは低調ですが自動車向けが好調です。xEV化に伴う軽量化やバッテリーケースで押出材需要が高まっています」

――xEV化がプラスに働いている。

「総合的にはxEV化は当社にプラスだと感じます。もちろん、内燃機関車のエンジン・ミッション部品生産が減り、我々が得意なそこに向けたダイカストマシン需要は減少する。しかし製造コスト低減を目的に、ボディ部品製造にギガキャストが採用され始めたことが我々にとってプラスです。ギガキャスト用のダイカストマシンは型締力4500㌧以上が必要。国内で当社しか製造できません」

――ギガキャスト対応の型締力6500㌧の超大型ダイカストマシン「UB6500iV2」を発売されました。

「元から型締力4000㌧まではラインアップしていましたが、BEV市場における超大型マシンによるボディ等の一体成形には一定の合理性があると考え、参入を決めました。当社のダイカストマシンは元々、比較的厚肉のエンジンブロックやミッションケースの生産で高く評価されています。理由は射出装置の特性だと考えており、アルミ合金の溶湯を瞬時に大型薄肉製品の金型に充填できる潤沢な充填力が強み。これが競合他社に対する優位点になりました。詳しくは自動車メーカー様での検討事項ですが、一般的にはギガキャストで30~40工程の製造が1工程になるとされます」

――反響のほどは。

 「国内外の様々なお客様から引き合いや問い合わせを受けています。メディアの問い合わせも多く、ダイカスト業界がこれほど注目されたことがあっただろうかという思いです。それほどギガキャストが産業界に与えた衝撃が大きかったのでしょう」

■車体軽量化にも追随

――押出プレスで訴求したい製品は。

「最新モデル『SS5G』シリーズです。特長は業界最高レベルの省エネで、従来機比20~50%の省エネを達成しました。鉄道や自動車などの車両部品の生産に向き、さらに省スペースです」

――産業機械も省エネが問われる時代になりました。

「ダイカスト・押出プレスともにユーザーの脱炭素への関心は高まっています。我々もダイカストマシンの油圧ポンプを標準でサーボ制御にしたほか、金型スプレーの要領や金型の中子の動作時間短縮、製品の冷却時間の短縮などマシン以外も含めた生産全体の省エネ性能を追求しています。押出プレスもSS5Gシリーズは油圧ポンプがサーボ制御。さらに押出速度の精密制御やダイスの変形を抑える設備構造で歩留まりを改善し、製品1つあたりの省エネ化を図っています」

――xEV化に対しギガキャスト以外にどんな提案を行いますか。

「高まる軽量化への要求に対し、Hybrid Fill Castingと呼ばれる新たな工法を用いたダイカストマシンやスクイズダイカスト機を提供しています。ともに高強度のアルミ部品製造が可能で、お客様の材料転換に役立ちます。またxEV化に伴い自動車部品の価格競争も激化しました。このニーズに対し、省エネを含めた製造コストを低減させる超ハイサイクル機を商品化しています」

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ギガキャスト対応機として唯一の国産である「UB6500iV2」を発売。リョービが導入を決めるなど大きな注目を集める

■Iotにも全力

 自動車製造の根幹を担うUBEマシナリーのダイカストマシン。稼動を止めないために様々なIoTサービスを展開している。機械や生産のわずかな変化や異常をAIで検知する「Dsupport-AEye」や鋳造現場を阻害する要因を判定する「Dsupport-Eye」、設備の稼働状況を遠隔監視する「Dsupport-Moni」がその一例。他にも様々なIoTサービスを開発する。

(2024年3月10日号掲載)