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黒田精工 機工・計測システム事業部 営業部 兼 企画部 部長 舩木 信裕 氏

現場ごとの正解を顧客と一体で探索

来年100周年を迎える黒田精工。国内外の精密研削加工ニーズに応えるため、熟練作業者から若手まで誰でも使いやすい操作性や環境性能を追求した研削盤の提案を強化している。自分が売った機械は自分で据え付けてきたという現場主義の同社・機工計測システム事業部営業部兼企画部の舩木信裕部長に営業の極意と100周年に向けた取り組みについて聞いた。

――2024年は調整局面との見方も多いですが、貴社の現況はいかがでしょうか。

「日工会の統計と同様に難しい状況が続いています。市場を見ますと小型の汎用機が特に厳しい状況だと思います。当社の平面研削盤は小型かつ汎用性の高い製品ですからなおさらといった感じでしょうか」

――厳しい状況とのことですが打開の目途は。

「期待として大きいのはやはり24年後半にかけての半導体業界の動きですが、EV関連の需要にも注目しています。他にも自動車向けの消耗品は既に昨年夏ぐらいから動きが活発化してきていますから、自動車向けの当社ハイドロリックツールの需要にも期待しております。半導体関係でも先行して投資をする動きも見られますので、設備投資にも波及していけば業界も底上げされるのではないかとみています」

――厳しい市場の中では特に営業・提案力が問われています。貴社製品は高い環境性能など時代に合った訴求ポイントを持っています。

「金型の大型化に対応した平面研削盤『GS-126CV』は、左右送りにACサーボモーターを採用し、自社製の専用精密ボールねじによる電動化をすることで油圧駆動と比較して消費電力量を大幅に削減できます。エネルギー価格・電気料金が高騰している今、環境性能の高さは大きな訴求ポイントとなっていますが、カタログスペックと価格だけで決まらないのが工作機械の営業です。特に研削盤を使用する砥粒加工はまだまだ職人さんのカン・コツといった属人性が残っており、一部の企業ではこの加工は○○さんしかできないなんてこともあります。そうした方達から指名いただくには、お客様のかゆいところに手が届く小回りの利いた営業が重要になります」

――小回りの利いた営業とは。

「拡張性の高さ、つまり豊富なアイテムで顧客ごとのカスタマイズ対応ができることです。砥粒加工で属人性が排せない理由は、作るものや使用する機械が同じであっても、安全規格や加工手順・方法・好みが会社や作業者によって異なる点です。簡単な例を挙げると本体前面カバーの材質もステンレスではなく加工面が見やすいアクリルが良いとか、操作盤の画面やソフト、スイッチの配置をカスタムしてほしいといった要求が多々あります。そうした細やかな配慮が1ミクロン、2ミクロンの精度を追求していく現場では差別化要因になる可能性があります。お客様ごとの正解を引き出し、豊富なオプションからお客様のゴールに向けてジャストフィットな提案をしていくことが重要と考えています」

■完全自動化の一歩手前をお手伝い

――コロナ禍下ではデジタル活用も進んだと思います。リアル商談が増える中でも活きている取り組みはありますか。

「コロナ禍に始めた動画による製品紹介は現在も継続していて、来月にも数本アップ予定です。また、スピンドルの交換手順や油漏れへの対処方法の動画など、簡単かつ発生頻度の高いメンテナンス・修理に関する動画も投稿しています。コロナ禍のようにリアルでお会いすることが難しい状況が発生しても、お客様に安心して購入・使用継続いただける体制を整えていくため、動画による提案・案内は継続していきます」

――製品の方向性は。

「人手不足の波は砥粒加工の現場にも当然押し寄せており、技能継承などが問題となっています。当社では技能継承の負担を少しでも減らすため、GS︱126CVのオプション機能として自動アタリだし機能『GS-SmartContact』や自動ドレス最適化機能『GS-SmartDress』などを用意しています。これまで熟練作業者でないとできないと言われてきた作業の一部を自動化・スキルレス化することで、本来であれば10伝承しなければならないことを2や3で済ますことが可能になります。完全自動化の一歩手前をお手伝いするアプリケーションは今後も増やしていこうと考えています」 

――来年の100周年も見えてきました。意気込みなどがあれば教えてください。

「100周年に向けて記念のイベントや新製品などは計画しています。しかし、営業的にはやはり100周年という節目を盛り上げるためにも大きな数字を作っていきたい。そのためにも代理店さんに応援いただくのが第一だと思っています。日本のモノづくりにとって人と人との交わりは非常に重要です。販売店さんとも連携しながら取り組みを加速させていきたいと思っています」

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大型平面研削盤「GS-126CV」

■JIMTOFで新機種

創業100周年に向けて弾みを付けたい同社は、11月に東京ビッグサイトで開催されるJIMTOFで新製品を出品予定。詳細はまだ明かせないとしながらも、従来無かったタイプの機種で更なるニーズに対応していくことを狙う。

(2024年3月10日号掲載)