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鈴木油脂工業 代表取締役社長 鈴木 和哉 氏

ニーズ把握、研究開発、市場投入を最短に

「アロエローヤル エコ」「カビトリバン」などでお馴染みの鈴木油脂工業。日本初の工業用クリーム洗剤「エルグ」の製造販売や1987年に無機質マイクロカプセルの製造プラントを竣工するなど先駆的な事業展開を行ってきた。それを支えるのが同社の研究開発力だ。営業が掴んできたニーズを最短で市場投入するスピード感を大切にしている。開発者でもある鈴木和哉社長に話を聞いた。

アロエローヤル エコを手に 鈴木和哉社長

――「アロエローヤル エコ」を含む化成品の直近の売り上げの進捗は。

「工作機械などの受注動向は波がありますが、問屋さんや販売店さんの強力なサポートもあり当社の化成品は景況の影響をあまり受けず安定しています。手洗い洗剤、工業用のアルカリ性汎用洗剤ではある程度認知が進んでいます。ペイント一発PCなどの塗料用洗剤の伸長を含め、第二、第三の柱となる商品群の構築を目指しています。幸いユーザーとのしっかりとした関係性を築いていますので、さまざまな要望が寄せられます。根気よく要望に対応する中で次の柱が生まれてくるでしょう」

――ペイント一発PCについて教えてください。

「手に付いたペンキはシンナーで落とすのが以前は常識でした。『ペイント一発PC』はウレタン、エポキシなどの2液性塗料や頑固な油汚れ、さらに接着剤まで強力に落とす手洗い石鹸です。同商品をより汎用的に使いたいというニーズがあります。現行商品は研磨剤が入っているので金属の表面などを洗うと傷が行くことも。研磨剤なしで塗料を落とせるような進化版を開発中です。金属製品はもちろん、落書きの清掃など用途が広がります」

――アロエローヤルのスクラブ剤を天然素材で分解性の高いデンプン由来に変更した「アロエローヤル エコ」に切り替えて1年になりますが。

「以前と変わらず順調に推移しています。スクラブの感触が変わりましたが、継続的に使用して頂いております。ISO19000などを取得している現場へは、環境配慮型の商品としてアピール力が格段にあがりました」

――先駆的な商品群をいち早く市場投入していますが研究開発にどのような特徴が。

「大手のようなリソースはもちろんなく、現在は少人数体制で研究を行っています。クリーム洗剤もマイクロカプセルも先駆的に投入した分、浸透も早かったです。営業が掴んだニーズをもとに少量生産して、特定のユーザーに販売してフィードバックを受けて改善し、評判が良ければ拡販していくという戦略を取っています。容器の共通化などでリスクを低減しつつ、失敗を恐れず、市場で試してみるというスピード感が重要です」

■マイクロプラスチック問題解消

――BtoCの動きも。

「業務用商品と中身は同じで、容器やサイズを変えて家庭用商品に展開しています。従来の家庭用にはない、高い洗浄力が人気になっています。我々のブランドではなく、家庭用メーカーのOEMというスキームになります。例えばリトルスメルという車の業務用鉄粉取り剤を家庭用の汎用サビ取り剤として販売してヒットしました」

――社長に就任され約2年がたちましたが。

「会社の勃興期には、トップダウン型の組織のほうが効率が良かったのですが、現在は多様性の時代であり、不確実性が増してもいます。私が社長に就任してからは、各部長に権限を委譲し判断を尊重する経営方針に転換しました。また社労士資格を有する取締役が、率先して働き方改革に取り組んでいます。若い社員も入ってくるようになりました。各部長がしっかりフォローしており定着率も高いです」

――マイクロカプセル事業については。

「多孔質シリカ粒子が主力商品で、ファンデーションなどの感触・機能を向上するために処方されます。無機質マイクロカプセルは当時の通産省工業技術院大阪工業試験所の中原佳子先生らが開発されました。その中原先生の研究室に当社の前技術部長が学生時代に研修に行っていたのが始まりです。最初は全く売れなかったのですが、環境意識の高まりなどで有機物のプラスチック粒子が使用自粛の方向に進む中、マイクロプラスチック問題がない我々のシリカのニーズが高まっています」

――生産設備の増強は。

「多孔質シリカ粒子の需要の高まりや、化成品などの生産キャパシティーのひっ迫もあり、生産設備の増強は、M&Aなども含めて、そう遠くないスパンで実施したいですね。その中で自動化などもさらに進めたい」

ペイント一発PC本体1.5kg(S-2323).jpg

更なる伸長を目指す「ペイント一発PC

アロエローヤルがエコになって

主力商品「アロエローヤル」のスクラブ剤を天然素材で分解性の高いデンプン由来に変更。「アロエローヤル エコ」として商品切り替えを実施した。マイクロプラスチック問題を解決したいとの強い思いから開発に3年を費やした。「工業的に作られたポリエチレンなら不純物がなく安定していますがデンプンは天然物で成分に微妙な不純物が含まれバラツキもあります。50度の過酷な環境で半年以上安定した状態に安定させる処方を見つけるのに苦労しました。過去には2カ月後に分離してしまい発売を白紙に戻したこともありました」(鈴木社長)と話す。本体2.5kg1個に詰替2.5kg2個を組み合わせたお得なセットも発売し、販売促進を図っている。

2024325日号掲載)