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愛知産業 代表取締役社長 井上 博貴 氏/取締役 古田 真也 氏

「売って終わりにしたくない」顧客と共に歩むモノづくり革新

欧米の最先端のモノづくりソリューションを提供する技術商社・愛知産業。その強みは輸入・販売にとどまらないエンジニアリング力にある。同社に寄せられる昨今のニーズや、優れた海外製品の提案から導入、運用に至るまでのプロセスについて井上博貴社長と営業本部の古田真也取締役に訊いた。

写真左より、古田真也取締役と井上博貴社長

――直近の需要動向をお教えください。

井上(博貴社長)「人手不足や環境問題への対応など、大手を中心に設備投資意欲は底堅く、受注も順調に推移しています。特にエネルギー関係が好調で、風力など自然由来エネルギーから原子力まで新規、既存設備共に動きが活発になっています」

古田(真也取締役)「グローバルでエネルギー価格が高騰する中、ベストミックスの電力供給が求められています。当社はかねてより原子力関連を手掛けるお客様と一緒にノウハウを積み重ねてきましたし、風力は欧米の先進的な技術・製品の導入から運用、メンテナンスに至るまで国内外のパートナーと共に取り組んでいます」

――工作機械関連はいかがでしょうか。

井上「昨今、お客様の投資意欲は少し落ちてきてはいますが、当社は特徴のある製品を手掛けていることもあり、日工会の受注統計ほどの落ち込みはありません。特に金属加工の現場は深刻な人手不足が続いており、ワーク搬送やロボットによる溶接など、自動化への引き合いはかなり多くなっていると感じます」

――円安基調がここしばらく続いています。影響は。

井上「製品によりけりですが、およそ12~15倍ほど価格が上昇しています。それゆえ『以前に比べて見積りが高くなった』とか『予算に入らない』、といった声が多少なりとも挙がっています。しかしながら、当社が扱っている製品、装置、技術は価格差を超える付加価値を持っていますし、実際にお客様もイニシャルコストを上回るメリットを実感して頂いています」

古田「生産性の高い機械、省力化に寄与する製品、省エネ性の高い装置は、ランニングコストで十分元が取れます。トータルコストをどう見るかはそれぞれの経営判断になりますが、多くは『いま導入しないと手遅れになる』という危機感を持っている方が圧倒的に増えています」

■研削・研磨の自動化を推進

――実際に製品・ソリューションを提案する上で心がけていることは。

古田「良いモノと分かっていても、実際に良さを実感して頂くまでにどうしても時間がかかります。さらに現場が自由に使いこなすとなるとさらに時間がかかります。当社はただ売るだけではなく、立ち上げから運用までお客様にしっかり寄り添っていくことを心がけています」

――一つ一つの案件に対して面倒見良く対応されています。

井上「お客様に『売って終わり』ですと、現場は苦労しますし当社も良いアフターフォローが出来ません。お客様と立ち上げから一緒に勉強させて頂くことは、導入スピード向上や運用、メンテナンスのノウハウ取得にも繋がり、のちのビジネス展開がスムーズに行えます。従って『売って終わりにしない』事を当社は心がけております」

古田「当社は、金属加工の領域に対して幅広いソリューションを有しています。ワークを削る、磨く、溶接する、積層するなど様々なプロセスがありますが、その前後の工程まで最適化することが可能です。工程の全体像を見渡した提案ができるところも当社の強みです」

――海外の製品を販売すると同時に、自社で導入され研究・開発もされています。先日は英WAAM 3D社の大型金属3Dプリンタを導入されました。

井上WAAM社は単なるスタートアップではなく、英政府が国防を強化するためにかなり資金投入しているクランフィールド大学発のベンチャー企業です。実際に昨年11月に現地に行きましたが、スタッフの7~8割が研究者で最先端の技術を研究し、実際に航空宇宙・軍事開発で培った膨大なノウハウをベースに、製品をどんどんブラッシュアップさせています。こうした新しい機器を国内のモノづくりに提案するには、まず自社で特性や運用方法を知らなければと思い、導入しました」

――国内のモノづくり現場ではまだまだ積層造形に対する関心が少ない。

古田「欧州では付加価値の高いモノづくりとして3Dプリンタの活用が進んでいます。中国をはじめとしたアジア諸国にも次第に広まりつつあり、このままじゃ日本は負けてしまう、という危機感もあります。単純に商売だけではなく、この現状をどうにか変えていかなければならないと考えています」

――積層造形以外の部分で今後注力していきたい分野は。

井上「溶接やバリ取り、研削・研磨の自動化を推進していきたいですね。従来、ヒトにしか出来なかった作業がロボットで代替できるようになっています。地味で大変な作業ですから、担い手も少なくなってきています。こうした現場こそ、当社の技術がお役に立てると思います」

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WAAM社の大型金属3Dプリンタ

モノづくり現場に生成AIを

モノ売り、コト売りだけにとどまらない高い「開発力」を有する愛知産業。現在注力しているのが、昨今話題の生成AIを使った検査や測定用ソフトの開発だ。

「以前から画像認識AIの開発には取り組んでいますが、現在はさらに精度の高いものを開発しています。インフラの点検作業からモノづくり現場の検査やトレーサビリティにも活用できるような汎用性の高いものを、ハードを含めたシステムとして提案していきたい」(井上社長)

2024325日号掲載)