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をくだ屋技研 代表取締役社長 奥田 智 氏

環境の変化へチャレンジするユーザーに運搬で寄り添う

キャッチパレットトラックやハンドリフターなどの荷役運搬機械や空き缶プレス機などの環境機器を製造する「をくだ屋技研」。「ライバル会社はいない、『現場でモノを動かす困りごと』がライバルだ」と奥田智社長は言う。そして「モノを運ぶことを通じて社会課題の解決に取り組みたい」とする。同社の2024年問題、少子高齢化、一億総活躍社会などへの製品を通じた対応を聞いた。

――2024年問題が直前に迫りますが直近の状況はいかがですか。

「当社は『モノを動かす困りごと』の解決を目指す会社ですので、あらゆるジャンルから多くのご相談は頂いています。2024年問題に限らず、今、ニーズが多様化しています。その中で『環境』がキーワードになってきます。エコという意味の環境はもちろん、『働く環境』や『少子高齢化』という環境などです。そして我々の事業活動は、そうした社会課題に紐づいているか、を重要視しています」

――困りごとの解決に、まずパワーリフターが上がると思います。

「パワーリフターは、モノを高いところにあげる製品で、人の手では動かせない金型を動かしたり、プレス加工での安全な段取り替え、棚から棚など近距離でモノを動かすのに重宝します。フォークリフトのように免許がいらず、コンパクトな設計で小回りが利きます。フォークリフトは所持台数に制限があることや操作に免許が必要など、荷物を運搬するまでに待機時間が生まれますが、パワーリフターはすぐに取り出せ、誰でも使えることから荷物運搬のスピード感を向上させます」

――汎用機だけでは対応が難しいのでは。

「すべでの機種でユーザーの工程に合わせ、カスタマイズを行った専用機での対応に力を入れています。多様性の時代にユーザーもさまざまな変化に対応しチャレンジングな試みをされています。これまでは規格品と呼ばれる汎用機が多かったのですが、付加価値付与や差別化をしていくためには、ユーザーのチャレンジにフィットする製品が必要になってきます。現在、専用機が4割ほどになっており、割合は増えていくでしょう。メーカーとしての経営だけを見れば規格品7割、専用機3割が理想ですが、『運び方』や『誰が運ぶか』が変化する中、『未来の運び方のスタンダード』をつくるためにも専用機の増加は歓迎すべきです。また海外輸出や海外製造においても、価格勝負になりがちな規格品では、なかなか中国メーカーなどに太刀打ちできません。ユーザーのチャレンジやお困りごとに寄り添う専用機なら十分な市場を開拓できます」

――専用機伸長は、半面工数が増えて対応の困難化を招くのでは。

3年ほど前に事務処理用のオフィスコンピュータのメンテナンス終了を見据え基幹システムを入れ替えました。データが蓄積され、モノづくりにおける総勘定元帳のようなものが出来上がるシステムになっています。データが集まってくると在庫の持ち方が効率化され、仕掛在庫データから、専用機の一定のトレンドを導き出せます。DXの深化で量産工程に、オーダー部分を効率的に入れ込む工程管理を目指しています」

■省エネ100%のモノづくり

――女性の活躍社会、高齢化の問題も課題のひとつですね。

「誰でも簡単かつ安全にモノを運ぶことが出来るローリフトも活躍します。力がある、なしに関係なくモノを運べるという点でSDGSが掲げるジェンダーの平等に寄与するのではないかと考えます。ローリフトに加え、アシスト式台車やアシスト式リフトテーブルなどのプッシュシリーズも重要度が増しています。また障害者雇用促進法の改正で『雇用の質のための事業主の責務』が明確化されました。こうした製品が役立てばと願っています」

――カーボンニュートラルへの対応は。

「環境というキーワードの中に事業があると思っています。どういったエネルギーを使って我々の製品を作るかは重要な問題です。中小企業ですから自社だけで賄いきれない部分も多く、DayZpower(デイズパワー)のPPA事業を活用しました。太陽光発電やトラッキング付再エネ指定非化石エネルギーで、再生可能エネルギー100%のモノづくりを実現しています」

――今後の商品開発は。

「コールドチェーンでの『モノを動かすお困りごと』への対応を進めています。鉄からステンレス製へ素材を変えて水や塩分の多い環境でも簡単に扱える商品群を増やしています。その先に、詳細は言えませんが環境に適した新素材を使った製品を開発中です」

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キャッチパレットは、今年誕生60周年を迎える

大阪・関西万博に製品を寄付

(公社)2025年日本国際博覧会協会は、大阪・関西万博をより魅力的なものとし、すべての来場者が快適に過ごせる会場づくりを行うため、会場整備・運営に必要な施設、物品、サービスなどの協賛による提供を募集。「大阪のモノづくり企業として盛り上げたい、そのため運搬でお手伝いしたい」(同社長)とし製品を寄付する。「万博に寄付するためには、環境や調達など、製品に対する考え方を厳しく問われます。それを通じて、今の我々のモノづくりが、万博が描く未来の姿に適合するかを確かめたい」とした。

2024325日号掲載)