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ジェービーエムエンジニアリング 小谷 幸次 社長

3DCAD/CAMの導入こそDX実現への第一歩

世界で最も使われているCAD/CAMソフト「Mastercam」。その販売において世界No.1セールスを何度も受賞しているジェービーエムエンジニアリング。日本のモノづくりの競争力の源泉とでもある設計分野を下支えする同社トップに、昨今のCAD/CAM市場動向から独自の販売戦略に至るまで、幅広く伺った。

昨今の貴社取り扱いソフトの販売動向を教えてください。

前期は事業再構築補助金などモノづくりへの手厚い支援があった影響もあり、多くの工作機械メーカー様の5MCがよく売れました。そのおかげでMastercamMultiaxis(同時5軸加工)が前年比140%と伸長しました。

これは、従来の主力であったMILL2~2軸半・単面3軸ミーリング加工)やMILL 3D(複合面同時3軸ミーリング加工)にほぼ並ぶ数字で、切削加工の現場に5MCが普及し始めていることを実感しています。

以前は工作機械が売れた後に設計ソフトの需要が高まる傾向でした。

最近では、「新規MC導入はまだ先だが、先行してCADCAMを導入したい」「新規MCが入らなくても、新しい製品に挑戦したいので導入したい」「現場の生産性向上のために導入したい」といったニーズがかなり多くなってきています。特に昨今は工作機械の納期が長期化していますが、いまのところ当社に対する需要は変わらず堅調です。

これまでの流れとはだいぶ変化してきていますね。

昨今は工作機械の販売動向にあまり左右されない流れになってきています。その大きな要因は、やはり商社様や販売店様が、機械が売れない時期でも設計ソフトのセールスに注力して頂いているところも大きな要因です。

これまでは設計ソフトを売ってもあまり利益に繋がらない、いろいろと面倒、よくわからないから、といった意見を頂いていました。それならば、設計ソフトのイロハからやりましょうか、ということで当社主催の勉強会を開催しています。昨年だけで40回以上開催しましたが、「意外とCAD/CAM簡単だし、これならば売れそう」となってセールスして頂ける、という好循環に繋がっています。

勉強会はコロナ禍以前から取り組まれていたのでしょうか?

コロナ以前も多少は行っていましたが、コロナ禍を契機に少人数やオンラインなど様々な手段を講じて勉強会を開催させて頂きました。そこで撒いた種が少しずつ実り始めているのかも知れません。

教育機関向けからの需要も旺盛と聞きます。

当社も例外なく需要が急増し、前年比360%超を記録しました。ソフトへの需要と半導体不足によるパソコン本体の調達難を見越して、事前に見切り発車で大量のパソコンを注文しましたが、最終的にはなんとか需要を取りこぼさずにお応えできました。

これは特需みたいなものですので、来年は無いと思いますが、これまでもCAD/CAMの学校教育支援サービスや、技能五輪国際大会や全日本学生フォーミュラ大会への支援など、未来のモノづくりを担う人材育成にも協力させて頂いています。

■エンジニア育成に注力

社長に就任されてから業績も右肩上がりですが、旺盛な需要に応えるにはマンパワーも必要ですね。

積極的な採用と人材育成を進めた結果、会社全体の構造が変わってきています。数年前の当社では直近の需要は捌ききれなかったと思いますが、個人単位ではなくチームとして動くことが浸透してきた結果、繁忙期でも余裕を持って対応できました。

また、特に新人教育には力を入れています。Mastercamには3日間のビギナーズトレーニングプログラムがありますが、新人はその1日目の講師をできるようになるまでどこにも配属しません。今年入社した新人はすでに3日目までできるくらいに成長していますし、昨年入社した社員も3軸まででしたら何でも対応できるようになっています。無論、2年目3年目の社員はそれ以上に詳しくなっています。

社名どおり、エンジニアリング体制を強化されているわけですね。

実際の加工技術も学んでもらっています。昨年は5軸加工に4名、旋盤3名、ワイヤー放電加工を4名が学びました。今年も5軸加工を5名、旋盤5名、36名、ワイヤー放電加工8名を予定しております。

やはり実際の加工ができるエンジニアはお客様の助けにもなりますし、どこにいっても重宝されます。将来的にはこうした技術者を派遣するようなカタチでモノづくり業界に寄与できればと考えております。

―Mastercamの開発元がサンドビック傘下に入りましたが、貴社への影響は。

合併後、サンドビック社とCNCソフトウェアからTV会議にて、商流・情報・メンテナンス等全て今まで通りCNCソフトウェア主体で行なっていくという説明を受けています。先日もアメリカから営業担当が来社し、近い将来での変更はないとの説明を受けています。

とはいえ欧米企業と日本企業の文化は違うので、何が起こるかは分かりませんし、創業来53年を迎え沢山のお客様にも恵まれてきました。何があってもお客様が困らないようなサポート体制を整えていきます。

そろそろMastercamの新版もリリースされますね。

はい。9月初旬にMastercam2023の日本語版をリリースします。最近ではIT補助金を活用しての導入が増えていますが、当社でも国や自治体など各種補助金を活用したスキームを数多くご用意しております。

世間ではDXやデジタル化が急務と言われていますが、その第一歩となるのが3DCADでの設計です。3Dデータは設計のみならず、モノづくり全体において大きな影響と変革をもたらし、企業の競争力の源泉にもなりえます。弊社は、CADCAM・アディティブ・計測測定そしてロボットアプリケーションなど様々なソフトウェアのご提供を通じて、製造現場を全力でサポートしてまいります。

(2022年7月25日号掲載)