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真潮流〜12

オンラインJIMTOF2020への期待 ーマスコミと関連工業会の強力な連携が必要ー

コロナ禍のため、12月7日(月)ら12日(土)に開催予定であったJIMTOF2020が中止となった。9月開催予定であったIMTS2020も中止となり、今年の工作機械関連の2大国際イベントが中止となり寂しい限りである。しかしながら、両者ともWebサイト上で展開するオンライン開催となり、長年にわたり、視察を続けている著者にとっては、オンライン開催でも、嬉しい限りである。

そこで、先ずはオンラインIMTS2020であるIMTS Sparkを覗いてみた。日本よりデジタル技術が進んでいると思われる米国のオンライン展示会ということで、VR技術を使い、あたかも各社ブースに自分がいるような感覚で会場をバーチャルで見て回ることができるレベルの高いものと期待していたが、残念ながらそのようなものではなかった。

WEBから見ることができる内容としては、各社の主な展示機種の写真や動画資料、各種デモのライブ配信、補足的なニュースやカタログ資料、会社紹介、各社の出展機のカテゴリなどであった。唯一オークマ(株)が、展示機種や受付の配置を示す簡易的なバーチャルなブースを掲載していた。ブースの風景と各機種の配置がわかり、該当機種の部分をクリックすると、その技術情報が見られるようになっていたので、多少、展示会の雰囲気を味わうことができた。

他社については、単に上記の項目を掲載しているだけで、そのレベル差は大きく、オンライン展示会への各社の期待には、かなりの温度差が見られた。最も簡素な出展としては、会社名と出展機のカテゴリ、ホームページぐらいの情報しかないメーカもあり、IMTS全体の技術動向を掴むのは困難であった。

著者としては、広い展示会場を、足を棒にして見て回らなくてもよく、展示ブースの混雑具合とは無関係に、PC画面上で、じっくり見学できるので、新しい視察形態として期待していた。しかしながら、実際には、会場を歩き回りながら、展示会全体の動向を感じ取るような効率的な視察は期待できないと感じた。

オンラインIMTS2020を見て感じた良い点としては、①遠く、海外まで行かなくても、国内で、海外の新製品、技術を見ることができる。②目当てのメーカがあれば、検索して容易に各社の新製品の展示内容を確認できる。③混雑していて、見学しづらい状況は避けることができる。④セミナやライブ配信は、ゆっくり見れるので、じっくり勉強できる。

一方、悪いと言うよりは、良くない点としては、①バーチャルな展示ブース掲載にはなっておらず、各社の今年の出展テーマなど、そのポイントが掴みにくい。②各社のブースの混み具合などが分らず、展示会場での注目機などを感じ取れない。そのため、自分の知らないメーカであると、訪問する動機が生まれにくい。③1社ごとに動画や掲載資料を見ていると時間が掛かり、その内容が期待外れであるとその時間的損失感がとても大きく感じられる。④1日中、PCの画面にへばりついて視聴するのは、会場を歩き回るよりずっと疲れる。

以上のように、オンラインには利点もあるが、今回のオンラインIMTS程度の実施形態では、生の展示会には勝てそうもない。少しでも生の展示会に近づけ、盛り上げるためには、マスコミ、工業会関係者がこの準備作業に相当なエネルギを投入する必要があると感じた。出展企業への事前のアンケートおよび取材による詳細な出展情報の掲載、会期中の技術セミナやパネルディスカッションなど、通常の展示会時より、さらに多くの取組みが必要と思われる。そのためには、各関連工業会は、会員の出展製品情報を早めにマスコミに流して、取材が行ないやすくなるように支援するなど、マスコミと工業会の強力な連携プレーが必要と思われる。オンラインJIMTOF2020が、オンラインIMTS2020より進化していることを期待したい。

日本工業大学工業技術博物館 館長 清水 伸二
1948年生まれ、埼玉県出身。上智大学大学院理工学研究科修士課程修了後、大隈鐵工所(現オークマ)に入社し、研削盤の設計部門に従事。1978年に上智大学博士課程に進み、1994年から同大学教授。工作機械の構造や結合部の設計技術の研究に従事し、2014年に定年退職し、名誉教授となる。同年、コンサル事務所MAMTECを立ち上げるとともに、2019年4月には日本工業大学工業技術博物館館長に就任した。趣味は写真撮影やカラオケなど。