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識者の目

アジア人材との良き協働のために〜4

アフターコロナで日本の労働を支えるのは誰か?

コロナ禍でわかったこと----
新型コロナウイルスによって、サービス業等の第三次産業(飲食業、ホテル業、旅行業等)は大きな痛手を受けた。一方、農業等の第一次産業では需要は落ちなかった。むしろ外国人労働者に頼っていた作業で、コロナ禍での入国制限により労働力確保ができず、減産を余儀なくされる問題が起こった。第二次産業である製造業では、一時サプライチェーンが分断され生産が止まったり、需要が落ち込んだ業種もあったが、精密部品分野ではそれほど落ち込まなかった。日本の製造業を支える自動車産業では、中国での回復が著しく、アフターコロナでは世界的に急激に忙しくなると予測される。コロナ禍で日本経済が大きな打撃を受けたのは、約70%を占める第三次産業が大きな痛手を受けたためである。

■アフターコロナでの製造業

コロナ感染防御で人・物移動が制限され、テレワークへの移行、サプライチェーンの見直しが行われた。アフターコロナになっても、同様のリスク回避のために地産地消が進むかもしれない。製造業にとって、いったん始まったグローバリゼーションを逆行させることはできないが、何を国内生産にするか、国内から輸出できるのは何か、何が国外生産にしなければならないのか、それらの再考が求められる。自動車等「組み合わせ」生産は消費市場のある国で、その部品等の成形・加工は地産地消で市場近くに、「すり合わせ」が必須の金型設計製作は日本国内に残り、国内からの輸出とすることが可能と考えられる。世界の消費市場は、コロナ禍での今は早く抜け出た中国、アフターコロナではバイデン政権による復活が期待される米国と日本国内、そして遅れてインドとなる。

■コロナでの外国人労働者事情

以前から、国内の飲食業やコンビニでは外国人従業員が多く見られ、留学生のアルバイトが多かった。彼らは、学費や生活費、親元への仕送りなどをアルバイトで稼いでいる。それが、コロナ禍で飲食店等が多く休業になりアルバイト需要が激減、アルバイトでの稼ぎに依存していた留学生が学費を払えなくなって、退学せざるをえなくなったりしている。外国人技能実習生でも、ホテル業務担当実習生などでは、コロナ禍で仕事が激減し会社から退職を求められたりしている。会社の都合で実習を続けられなくなり解雇された場合は、「技能実習」を切り替えて、農業、漁業、介護業など14の業種で働くことが可能となる。しかし雇用社側は、技能実習生が再度必要となった時のため、実習生に自己都合として退職させたりしている。この場合、実習生は帰国しなければならなくなる。

将来働き手を外国に求めなければならない日本にとって、今日本にいる留学生や技能実習生を大切にし、日本を好きになってもらわねばならない。上記のような状況に政府として早急な救済と法整備を望みたい。

■アフターコロナでの労働力確保

製造業で人材確保が困難になっているところは、まずICT化による省人化を進め、どこに、どのような人材が必要なのかを明確にして、それらをアジアの有能な人材採用に切り替えていくことを勧めたい。外国人留学生のリクルート、技能実習生受け入れを進め、中核人材として育ててほしい。将来の市場予測と、日本人とのメンタリティの相性から、ベトナム、インドネシアからの人材、ついでミャンマー、バングラデシュからの人材受け入れがお勧めである。中国人も良いが、いずれ中国国内での人材不足から、日本とは人材確保争いになる。

今、コロナ禍で上記の国からの入出国が停滞しているが、菅首相がベトナム、インドネシア訪問時にも調整が行われ、少しづつではあるが日本への送り出しが始まっている。アジアからの良質な労働者確保無くして、日本の農業、漁業、介護業、そして製造業も成り立たないことをコロナ禍で思い知ったわけで、政府には今後も抜本的な取り組みを望みたい。難しい問題であるが、「外国人技能実習制度」を本来の姿に戻し、外国人労働者を必要とする現状には、昨年から始まった「特定技能」での受け入れ体制の整備、さらに悪質ブローカーの取り締まり強化が関係部署へのお願いである。当NPO組織も受け入れ製造業と連携し、課題解決に積極的に寄与していきたいと考えている。

NPOアジア金型産業フォーラム「外国人材」調査研究部会
横田悦二郎/前川佳徳/園部和弘/田中美和
横田悦二郎:日本金型工業会学術顧問
前川佳徳:オフィスまえかわ代表
園部和弘:日越ものづくり機構代表
田中美和:神奈川大学国際経営研究所客員研究員