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Asiaから

実現性の高い中国の国家戦略

米国大統領選挙は11月3日の投票日をピークに、トランプ・バイデン両候補による激しい舌戦が繰り広げられたが、ちょうど同じ頃、中国では今後の経済運営を大きく左右する重要な決定があった。10月25日から5日間にわたり開催された第十九期中央委員会第五回全体会議(五中全会)で「国民経済と社会発展の第14次5カ年計画および2035年長期目標の制定に関する中共中央の建議」が審議、採択されたのだ。この「建議」の内容は来年から始動する新たな5カ年計画の指導思想や重点課題となるため、中国経済の中長期的な未来像を示した重要な政策決定といえる。

中国の情報化に向けた主な取り組み 

「建議」では、1人当たりGDP(2019年は1万276ドル)を2035年までに中等先進国レベルに引き上げるとする目標を掲げた。また第14次5カ年計画では、内需主導による経済発展を想定した「国内大循環」を主体としながらも、国内・国際の2つの市場を相互に促進する「双循環」による新たな発展方式を打ち出した。内需拡大という内向きの政策に留まらず、さらなる対外開放によって国際市場の活力をも取り込んでいく狙いがみえる。

11月に相次いで実施された第3回中国国際輸入博、アリババグループ主催の双11ショッピングフェスティバル、東アジア自由貿易圏構想と位置づけられるメガFTA「東アジア地域包括的経済連携」(RCEP)の署名も、この新5カ年計画の方針と軌を一にしている。

■有言実行の「計画」でデジタル大国に

5カ年計画による経済政策は新中国建国後、ソ連に倣って導入されたもので、いまも続けられている。「計画」と聞くと、「計画はあくまで計画」であり、そのとおりに実現するのはなかなか難しいと経験的にとらえがちになるが、中国政府の「計画」は実現にいたる確度が極めて高い。これは指令性の強い計画経済時代の名残ともいえるが、共産党一党独裁による政治体制と相まって、大きな推進力を伴い実行されていくのが特徴だ。

新型コロナウイルス感染防止対策においても、中国式「計画」は大きな威力を発揮した。感染の封じ込めには「非接触」がカギとなる。人との接触をなるべく回避しながら、社会経済活動をどう維持していくか。中国はIT(情報技術)をフル活用することにより「非接触」を実現し、感染拡大をいち早く抑え込んだ。その効果は1〜9月の経済成長率が前年同期比0.7%増とプラスに転じたことにも表れている。

(2020年11月25日号 アジア版 掲載)

愛知大学 准教授 阿部 宏忠
愛知大学 国際ビジネスセンター所長 現代中国学部 准教授
20年間の日本貿易振興機構(JETRO)勤務を経て2011年から現職に。JETROでは北京、上海、青島に計10年間駐在し、日系企業の中国進出を支援したほか中国市場を調査。1968年生まれ。