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識者の目

真潮流~18

工作機器で独自の工作機械をモジュラデザイン
-工作機械との結合部の徹底的な標準化を-

最近、ある雑誌社より今後の工作機器のあり方についてインタビューを受けた。

その際に、工作機器の定義と役割について改めて考えてみた。工作機器の定義は、特に一般的に定められたものは無いようで、一般社団法人「日本工作機器工業会」では、「金属加工機械、非金属加工機械等の産業機械に使用される機器」と定義している。それでは、「機器」の定義はなにかというと「機械、器械、器具の総称」となっており、結局、明確なイメージは伝わってこないのが現状だ。

そこで、日本工作機器工業会がカバーしている製品範囲を見てみると、ボールねじ、直進運動案内、スピンドル、クラッチ・ブレーキなどの部分品(要素機器)、工作物保持具、工具保持具、テーブル、割出台、各種アタッチメントなどの付属品、クーラントセパレータ、切りくず処理装置や油温制御装置などの付属機器(周辺装置・機器)が挙げられている。これらの製品を改めて見直すと、「工作機器とは、ものをつくる(工作する)際に使用する工作機械をはじめとした産業機械の機能を補助する、あるいは新しい機能を付与するための機器類である。」と言えそうだ。

インタビューを受けながら、部分品(要素機器)以外については、工作機械のユーザは、必要な工作機器を選択して、自分が必要とする工作機械にカスタマイズしてもらい、購入していることに気が付いた。さらには、自社工場では、加工用工具や各種工具用ツールホルダなどについては、加工する工作物に合わせて、その都度工作機械をカスタマイズして使っている。そして、これら工作機器をモジュールとするならば、ユーザは、購入した工作機械をプラットフォームとして、それらモジュールを組合わせて独自の工作機械をモジュラデザインして使っていることになる。

工作機械メーカでは、図に示すように工作機械をモジュラ構成として、準備された多くの標準モジュールを組合わせて各種のユーザ仕様に対応している。これをユーザの現場で行うには、組立精度の再現性など、まだ色々と困難が多い。しかしながら、工作機器については、特に工具、ツールホルダや工作物取付具などは、上述のように既に顧客の現場で組立が可能となっているのだ。これは、正しく2000年頃に米国で提案されたリコンフィガラブル工作機械のコンセプトを具現化していることになる。

逆に、ユーザは、メーカ任せではなく、最適な工作機器(モジュール)を選定し、独自の工作機械をモジュラデザインすれば、これまで以上に生産性の高い工作機械になる可能性があるということだ。

工作機器メーカ側としては、工作機器を工作機械のモジュールとしてとらえ、結合部(インタフェース)の標準化を図り、どのメーカの工作機械上でも使えるような柔軟な環境を提供すべきと思われる。また、工作機械メーカ側としても、工作機器との結合部(インタフェース)を標準化し、ユーザが多様な工作機器メーカの製品を自由に選択し使えるような環境を提供して欲しいものだ。例えば、NC旋盤のタレット刃物台用のツールホルダ取付部などには互換性が無く、ユーザもツーリングメーカも困っているようだ。

工作機器メーカが競って素晴らしい製品を開発できる環境を整備し、ユーザが、そこから産み出される、自分にとって最高の工作機器を選定して、独自の工作機械のモジュラデザインが可能な環境を提供すべきと思う。その意味でも、工作機械と工作機器の両業界で、両者をつなぐための標準化を徹底的に進めることの意義は大きい。

日本工業大学工業技術博物館 館長 清水 伸二
1948年生まれ、埼玉県出身。上智大学大学院理工学研究科修士課程修了後、大隈鐵工所(現オークマ)に入社し、研削盤の設計部門に従事。1978年に上智大学博士課程に進み、1994年から同大学教授。工作機械の構造や結合部の設計技術の研究に従事し、2014年に定年退職し、名誉教授となる。同年、コンサル事務所MAMTECを立ち上げるとともに、2019年4月には日本工業大学工業技術博物館館長に就任した。趣味は写真撮影やカラオケなど。