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リンナイ、Hot.Lab浜松町の使用を本格再開

8階にはマイクロバブルバスユニット内蔵給湯器を使った入浴体験ができる展示室もある。海外のホテルのような空間と体験を目指した。

オンライン併用で顧客接点の多様化狙う

 コロナ禍は住宅設備機器メーカーの販売戦略に対しても大きな影響を与えた。特に、ショールームや研修施設などの対面での活動が大きく制限され、オンラインの活用などが進んだ。一方で、リアルでの取り組みの重要性が再認識され、制限がなくなった5月からはリアルでの活動を本格化させる企業も多い。その一つがリンナイだ。コロナ以前と渦中、今後の取り組みについて話しを聞いた。


 リンナイの「HotLab浜松町」は2010年の事務所移転を機に、調理や入浴体験を実際にできるBtoB向け体験型研修施設としてスタートした。ミストサウナなどこれまで世に普及していなかった製品の認知向上などに大きく寄与してきた。8階まである展示・研修空間には付加価値の高い製品(フラッグシップコンロ「DELICIA デリシア」やハイグレードコンロ「Lisse リッセ」など)が設置されており、同社の「より上質な暮らしの理想」が詰まった空間となっている。DELICIAマイスター研修といった研修制度においても、製品を詳細まで知ることはもちろん、製品が提供する価値やコトにフォーカスした提案方法を習得することができ、普段料理をしない人でも料理の楽しさや調理・手入れのしやすさを実感・体感できる内容となっている。
 そのためコロナ以前には「お客様にHotLabに来ていただいて、どんどん体感していただくのが営業の一つのセオリーだった」と織田さんは振り返る。そうした状況がコロナ禍に入ると一変。一度の案内人数を3分の1程度に制限し、好評であった実演・実習時の試食もできない状況となり、歯がゆい思いをしてきた。
 「試食をして初めて『美味しいね』という会話が広がる。見た目や匂い、音などでも美味しさを訴えることはできるが、一口食べてもらうことがお客様との距離を縮める重要なポイントであったと改めて感じた」(小田川さん)

■進んだオンライン活用

 施設に来てもらうこと自体が難しくなった中で活用されたのが、ウェビナーやビジネス向けプラットフォーム「Rinnai BiZ」といったオンラインコンテンツだ。特にウェビナーは初期段階の提案や実際に製品触れる前の情報共有の重要なツールとして役立った。現在では全て内製化をし、自分たちで基本的なコンテンツの作成や配信、アンケートの作成などまで独自で手掛ける。制限が解除された今も新製品情報を広くタイムリーに届けたり、簡単な情報共有といった営業の補助ツールとして活用する。
 「コロナで距離を取るための手段としてウェビナーを積極的に採用した。制限がなくなった今、ウェビナー本来の距離や時間を縮め、顧客接点を多様化するツールとして定着しつつある」(織田さん)
 また好評なDELICIAマイスター研修も今年度下期から認定制度を取り入れたDELICIAアンバサダー研修(仮称)としてリニューアルを予定しており、リアルとデジタルの両面で研修体制をより充実したものにする。

■重要性増すリアルなブランド体験の場

 5月からは従来通りの試食などもできる以前のスタイルに戻っているが、コロナ禍を経て研修施設の重要性がより高まっているようだ。小田川さんはコロナ禍には暮らしを見直す方が増えたことで、「消費者がSNSなどで情報を入手されてから商品を見て選ぶ傾向が強まって来ている。加えて、設備についてもしっかりとこだわりたいという方が多く、販売する側がお客様以上に製品の知識を持っていないとなかなか信頼を得られないというケースを耳にしている。ここでは付加価値の高い製品の詳細からコト提案まで学んでいただくので、消費者目線の提案を行いたい企業様からの関心が高まっている」と述べる。
 さらに、4月には南青山に同社初となる消費者に寄り添った生活体験とブランド体験の場の開設を発表するなど、将来に向けて消費者志向への変革の具現化を進めている。これまでも、よりハイエンドの顧客層の獲得を狙い、デザイン性の高い「G:LINE ジーライン」などを発表してきた。感性の高い消費者が集まる南青山に常設の体感施設を設置することで、「既存市場の縮小や、カーボンニュートラルの潮流など外部環境がメーカーにとって大きく変化する中、新たな顧客層の方へと訴求やコミュニケーションをしっかりと行っていきたい」と、リアルでの顧客接点の多様化をさらに推し進めていく考えだ。

2023725日号掲載)