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建設×3Dプリンタの現在

セレンディクスが提供する50平方㍍の3Dプリント住宅は2日足らずで完成にこぎつけられるという

 慢性的な人手不足と「2024年問題」への対応に悩む建設業界。在来工法に比べ工期短縮につながる3Dプリント技術の利活用が熱い視線を集めるが、こと国内に限っては普及に壁があるのも実情だ。米国ではすでに3Dプリント住宅による「街」の建設に着手した事例もあり、他国でも橋や3階建て住宅を造形するなど実用化が進む。しかし災害の多い日本では10平方㍍を超える建物は建築基準法に準拠し建築確認申請を行い、鉄骨や鉄筋など指定建築材料を使わない場合は個別に国土交通大臣の認定を受ける必要がある。モルタルで積層造形したブロックを組み立てるだけでは構造体と認められず、この壁を突破しなければならないのだ。
 これを打破しようとする動きが近年、国内でも活発化してきた。テックベンチャーのPolyuse22年に10平方㍍を超える床面積の建物の建設を、3Dプリント施工として国内ではじめて(同社調べ)建築確認申請を取得して成功させた。3Dプリント部材と鉄筋を組み合わせることで基準をクリア。3Dプリント住宅を手がけるセレンディクスも、50平方㍍の2世帯向け住宅を鉄骨と3Dプリント部材を組み合わせて23年に竣工させた。
 大手ゼネコンでも研究開発が進む。大林組は独自材料を使った3Dプリンタ実証棟を234月に竣工。セメント系材料を用いた3Dプリンタによる建築物として、国内ではじめて建築基準法に基づく国土交通大臣の認定を取得した。プリントした壁の内部に流し込んだ高い引張強度や引張靭性をもつ独自材料「スリムクート」が構造体となり、鉄筋も鉄骨も使わずに建築基準法に準拠している。
 このように国内での3Dプリント施工は一部の先駆者が法に適合した実証例を積み重ねている段階だ。越えるべきハードルが多いのは事実だが、普及に弾みがつけば価格の低減やルールの改正も期待できる。建設現場の人手不足を解決に導く切り札として、近い将来の普及拡大を待ちたい。

2024125日号掲載)