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フードテック企業を京都府南田辺西地区に集積

「食」キーワードにイノベーション目指す

 京都府は南田辺西地区(京田辺市)に「フードテック」関連企業の集積を目指し工業団地の開発を行う。2025年の着工を目指しており、完成すれば環境共生型の緑あふれる約50haの整備区域が生まれる。
 京料理をはじめ、独自に進化した洋食や中華、発酵食品やラーメンまで世界から注目される多彩な食文化を背景に持つ京都府。現在、食品産業に先端技術を用いイノベーションを起こす「京都フードテック基本構想」に取り組んでおり、南田辺西地区開発プロジェクトはその一環だ。
 京都府商工労働観光部の山本太郎副部長は「京都府総合計画で『産業創造リーディングゾーン』というコンセプトを打ち出しており、脱炭素やアート&テクノロジー、シルクテキスタイルなど世界に通じるテーマの旗を立てて、オープンに研究者や企業の参加を促す。そのための拠点を府内各所に整備をするもの。テーマを絞ることでイノベーションを効率的に生み出そうとの考えだ。その中で、フードテックを旗印にした京都フードテック基本構想が生まれた」と説明する。「京都府は伝統産業を基礎としながらイノベーションを起こしてきた街だ。しかし、その力が鈍化しつつあるのではという懸念がある。いま一度競争力を高めたい。ユネスコの無形文化遺産の和食、お茶、発酵など、世界に通じるものと自負している。京都の『食』を『けいはんな学研都市』という先端技術の集まる場所で展開させれば、更なる進化を生むだろう」と力を込める。またソフト面では2310月「学研フードテック共創プラットフォーム」を設立。国内だけでなく海外の大学や研究機関、民間企業や行政などが「産学官」の世界的なネットワークを形成し、連携・研究チームを組成。オープンに幅広い情報交換やコラボレーションを行うことにより、イノベーションを推進するという。

■開発はフジタ、遠隔操作重機の投入検討も

 南田辺西地区の開発を担うのはフジタ。22728日、複数の応募者の中から京都府が設置する選定会議で、外部有識者委員の評価などで決まった。
 フジタはまちづくりのコンセプトに「フードテック・スマートバレー」を掲げ、「食」を中核とした幅広い分野での研究施設・生産施設の集積を目指す。そのため、減災を考慮した全域の無電柱化、同社が主体となる太陽光PPA事業によるエネルギーの地産地消や協力・関連企業とコンソーシアムを組んだ持続可能なまちづくりなどに取り組み、付加価値の高い次世代型産業用地を生み出す計画。またスタートアップ企業集積の場づくりを推進し、産官学連携でのインキュベーションの仕組みも構築していく。
 フジタ西日本開発事業部地域開発推進部柴田博之部長は「地区中央部に約2haのシンボル公園を配置。既存の樹木を一部に活用する自然環境再生ゾーン、就労者や地域住人が集う憩い交流機能ゾーンや遊び場機能ゾーンを配置することで周辺地域も含めたコミュニティーの活性化を目指す」とし「災害発生時の安心安全機能を持たせることを検討しており、従来の工業団地とは異なる環境共生型の緑あふれる産業用地にしていく」と述べた。非常用備蓄倉庫やマンホールトイレなどを整備してシンボル公園を一時的な避難場所として活用する案も出ている。
 工事には、同社のさまざまな最新技術が投入される予定だ。ドローンを用いてのレーザーによる地形測量やGPS搭載型搭乗式振動ローラーによる施工。さらには遠隔操作可能なICT搭載バックホウの投入も検討されている。
 工場の建設には京都府の企業立地優遇制度も利用可能だ。「条件によって違うが投下固定資産額等の10%の補助金、不動産取得税の最大50%の軽減、融資の3本柱でサポートする」(京都府担当者)とする。
 山本副部長は「学研という場所で食をテーマにした府の拠点づくりを強力に推進していくので、ぜひ南田辺西に参加してほしい」とアピールした。

南田辺西地区提案公表用資料-2.jpg

(【写真右】=フジタ西日本開発事業部地域開発推進部柴田博之部長(重要文化財 京都府庁旧本館にて撮影)、【写真左】=京都府商工労働観光部の山本太郎副部長(同))

2024225日号掲載)