日本物流新聞生産財と消費財の業界専門紙として半世紀を超す実績。
日本物流新聞社のWEBサイトでは、
ものづくりを支える工作機械、工具、ロボット、産業機器等の情報から、
ハウジングはじめ住まい・暮らしの様々なニュースをお届けしています。

検索

News

京都エレベータ、リニューアルで拡がるエレベータの可能性

京都エレベータの製品例。扉の模様は一見プリントのようにも見えるが、よく見ると厚さ3㍉ほどの精緻な木彫りの装飾だ

省エネ・デザイン・ロボット連携も

今日、エレベータに乗った時のことを覚えているだろうか。日常でも使う機会の多いエレベータだが、画一的なデザインゆえ、ともすればその印象はするりと記憶から抜け落ちてしまう。しかし、乗ったのが京都エレベータ(京都市下京区・田中陽一社長)の手掛ける独創的な製品なら話は別。その印象はしっかりと脳裏に刻まれるだろう。

同社の主力事業はエレベータのリニューアルとメンテナンス。関西を中心に年間約50件のリニューアルを自社の技術者でこなす。エレベータは大手数社が国内シェアの大半を握るが、同社はそれに属さない独立系。立ち位置を活かし、どのメーカーの製品にも比較的安価で改修や点検を行う柔軟な立ち回りが可能だ。

同社の推進するエレベータのリニューアルには、様々なメリットがあると田中社長は言う。「30年ほど前まで、エレベータはモータの正転でかごを動かし、逆転で停止させる仕組みを採用していました。これは停止時の電力消費が大きいのが難点ですが、インバータ搭載のモータに置き換えれば回転数を制御できるため停止時の揺れも少なく、省エネ性能が高まる。同時にかご内の照明をLED化することで、消費電力を3~5割削減できます」

■かごの中に小京都を

こうした省エネ化に加え、同社が推進するのが意匠面のリニューアルだ。実は同社、自社で設計製作を行うエレベータメーカーとしての顔も持つ。メーカーとしての個性を探る中で、社名にある「京都」を感じさせる独創的なデザインをエレベータに取り入れ始めた。

コンセプトは「ミニマル京都」。京都の内装会社と組み、「自由な発想でエレベータを装飾したい」と知恵を借りた。そうして生まれたのが、一見すると扉部分が障子にしか見えないエレベータや、厚さ3㍉の木彫りの装飾を扉に配したエレベータなどユニークな製品群。「乗り込む前と乗り込んでから目的階に着くまでの限られた数十秒で、いかに京都を感じてもらえるかが我々の挑戦」(田中社長)と、エレベータのポテンシャルを最大限引き出すべく提案を行う。

そうした意匠の可能性を探る最中、同社に舞い込んだのが搬送ロボットメーカーからの協業依頼だった。自律移動できる搬送ロボットは普及が期待されるが、階をまたいだ立体移動のためには昇降装置と信号のやり取りを行う必要がある。しかし多くのエレベータメーカーは他社製品との連携に消極的で、それがロボット普及の妨げになっていた。独立系かつ自社でエレベータ制作を手掛ける京都エレベータなら、ロボットとの連携に適した制御盤に置き換えるなど柔軟な対応ができるというわけだ。

「高層ホテルの場合、歯ブラシを上層階に運ぶにも大きな労力がかかります。しかしロボットなら部屋番号を押すだけで、自動で部屋まで運んでくれるわけです。今はホテル中心に実績を積んでいますが、今後は介護用途や工業分野での資材運搬など使い方を模索したい。我々のエレベータはオーダー仕様ですから、意匠やロボット連携など、お客様が望むことを既存の枠組みにとらわれずに実現したいですね」(田中社長)

「エレベータは乗れれば良い」。その価値観に一石を投じるべく、京都の地から挑戦を続ける。

IMG_2422.jpg

田中陽一社長と、エレベータと連携する自律搬送ロボット

(2022年7月10日号掲載)