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セレンディクス、大林組の特殊モルタルで実証実験

鉄骨・鉄筋レス3Dプリント住宅へ

 3Dプリンター住宅を手がけるセレンディクス(兵庫県西宮市)は、527日から広島県で大林組が開発した超高強度繊維補強コンクリート「スリムクート」を用いた3Dプリンター住宅の実証実験を行う。日本の建築基準法ではモルタルで積層造形したブロックを組み立てるだけでは構造体と認められないが、超高強度の鋼繊維を含んだスリムクートは2022年に、国内で初めて鉄骨を使わず建築基準法に準拠した3Dプリンターによる建造物として認定された実績を持つ。同素材を使うことで鉄骨・鉄筋レスによる施工の高速化につなげたい考えだ。

 海外を中心に住宅分野でも注目が集まる3Dプリンター。しかし災害の多い日本では10平方㍍を超える建物は建築基準法に適合していることの確認(建築確認)を取得し、鉄骨や鉄筋など指定建築材料を使わない場合は安全性の証明のために個別に国土交通大臣の認定を受ける必要がある。このためセレンディクスは鉄骨や鉄筋を組み合わせて3Dプリンター住宅を建築。鉄筋を組む作業は自動化できないためコストが増加する原因となっていた。
 大林組のスリムクートは超高強度の鋼繊維を含み単独でも構造物として利用できるセメント系材料だ。3Dプリンターで出力した躯体内部に同素材を充填することで、鉄骨や鉄筋を使わず高い強度や靭性を確保できる。鉄筋コンクリートと比べ建築にかかる人件費や工数を大幅に減らすことが可能で、建築コストの低減につながるとする。
 実証実験では527日から広島県坂町で、スリムクートを使った実験棟を建設。なお今回は建築基準法に合わせて鉄筋も使用するという。セレンディクスの飯田國大COOは「車を変える値段で家を買える社会の実現のため、住宅産業の完全ロボット化を目指している。広島県には自動車産業を支える多くの企業があり、協業いただけるパートナーを探している」とコメントしている。

2024525日号掲載)