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日本ホイスト・おどろきの工場、一貫生産、自動化、DX化で驚きの工場実現

日本ホイスト・おどろきの工場

規模・業務拡大に向け人材獲得・育成急ぐ

 ホイストクレーンの国内最大手・日本ホイストは、ホイストの製造だけでなく、クレーン設置の現場確認から企画提案、販売、据付、引渡、アウターサービスまで総合的なフォロー体制に大きな特長を持つ。同社は2015年から関東、中部、九州に出先工場を建設するなど、国内の製造体制の確立を進めてきた。21年には静岡県にロボットなどを採用した「おどろきの工場」を新設。工場に訪問しおどろきの理由を探った。
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日本ホイスト・おどろきの工場の藤原正夫工場長。藤原工場長が送った一通のメールから「おどろきの」という名前が付けられた。「初めてこの工場を見る方は驚いてくださいます。今振り返ると名前通りの工場になっていると思います」

 静岡県焼津市、大井川港の突端に日本ホイストの「おどろきの工場」はある。同社にとって4つ目となる出先工場だが、名称を含め様々な点で他の工場とは異なる。同工場の藤原正夫工場長がその特長を「規模」「一貫生産体制」「自動化・DX化」とするように、独自かつ最新の設備導入や取り組みが目立つ。その特異性を端的に示すのが、工場の稼働開始直後から1物件260基もの超大口案件を単独で完遂したことだろう。クレーン業界で4割超のシェアを持つ同社であってもこれだけの規模の案件は初めて。通常、1物件あたりの受注基数は多くても十数基程度であり、従来であれば他工場と連携しながら1年かけて製造を行う規模の案件であった。
 「人員の応援は送ってもらったが、この仕事を本工場内だけでやり切れたことが大きな自信になっている。この案件を完遂できたことで、他の工場ではこなすことができない大口の案件を担当する工場として、当社内でも独自のポジションを築くことにもなった」(藤原工場長)

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川崎油工製の専用プレス機。「少なくとも国内最大級のマシンです。従来は桁長12㍍超の製品は継がないといけませんでしたが、19㍍までプレスできるようになり、歩留まりが向上しました」

■独自・最新設備がムダ・ムリ削減

 大口案件の製造を支えるのが独自かつ最新の設備群だ。従来から同社はクレーンを製造する際、協力工場で加工した部材を仕入れ製品に仕上げてきた。それに対し、おどろきの工場ではその敷地面積を生かし、コイルレベラーや大型プレスマシンを導入。コイル状の鋼材の切断やプレス機による成形も工場内で一貫して行うことで、無駄の削減・歩留まり向上に役立っている。
 他工場よりも敷地面積が広く製造エリアも多い一方で、従業員数は20人弱と変わらない。いかに効率よく人員を配置するかが重要となる。同社クレーンの特長でもある桁は、U字に曲げた鋼材の内側に鋼鈑を竹の節のように入れる。従来、この鋼板を差し込み溶接する作業は人が行っていたが、おどろきの工場はロボットで自動化した。
 「独自・最新の生産設備の導入に加えて、鋼材を2次元バーコードで管理するDX化の取り組みも進めている。クレーンは一品一様であることが多く、製品管理が煩雑になりがち。進捗管理や行政への提出書類の作成などを簡便にすることで、製造において重要な部分に注力できるようになっている」(藤原工場長)

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プレス加工した桁の内部加工後、蓋の外周溶接及び付属品取付の溶接をほぼ自動化した

■人材獲得・育成が鍵

 工場の外に出ると空地が目立つ。現在は敷地の3分の1程度しか使用しておらず、藤原工場長は当然工場拡張の可能性を視野に入れているが、そのためには従業員の確保と能力向上が鍵になるとみる。
 「『企業は人なり』とも言う。行っている作業は昔ながらの鉄工所と一緒のため、普通にやったら3Kのイメージそのままの人員が確保しづらい現場になる。自動化などのハードによる現場環境の改善に加え、汚れて当たり前の製造現場を汚くはしないような仕組みなど、働きやすい現場づくりを心掛けている」
 藤原工場長は工場だけでなく業務の拡大も狙う。「現在、30㌧クラス以上の超大型クレーンは基本的に中国で前加工を行っている。しかし、地政学的なリスクなども鑑み、おどろきの工場でも製造できるようにしたいと考えている。そのためには人材育成が鍵となる。現在の従業員はもともと小型クレーンの量産のために現地で採用した人材。未経験者も多い中、大口案件の製造などを経験し、大型クレーンの製造にも対応できるようになってきている。今後、10㌧クラスのクレーン製造で経験を積んでもらい、大型、超大型・特殊クレーン製造にも携われる人材の育成をしていきたい」と先を見据える。

2023825日号掲載)