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現場の暑さ対策

適材適所の使い方

チラーでつくった冷水をウェア内で循環させることで冷やす(鎌倉製作所「COOLEX-1(クーレックス・ワン)」※酷暑作業用小型モデル)

夏物商戦がスタートした。スポットエアコンや工場扇に代表される「暑さ対策」製品の提案だ。ただ、暑さの感じ方は人によって異なるうえ、空間、作業内容、運動量、滞在時間、障害物の有無など、現場に見合った導入が求められる。涼しくなれば、作業効率が上がり、人手も確保しやすい。そこで快適な環境につながる「適材適所の使い方」に焦点を当てた。


大型機が使いやすく、密対策にも

大空間からピンポイントまで


気候温暖化の影響で、日本の年平均気温は年々上昇している。とくに1990年代以降、夏に高温となる日が多くなっていることも相まって、熱中症による救急搬送数は増加傾向にある。労働災害も例外ではなく、建設、製造、運送、警備など、屋外作業や激しい運動を伴う業種で発生しやすい傾向にあることに変わりない。暑さが本格化する前から、身体も周辺環境も「酷暑」に備えることが肝要だ。

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今春から本格的な販売を開始した静岡製機の「RKF711」。ダイヤルで風量を無段階調整できる

静岡製機が提案する気化式冷風機「RKFシリーズ」は、周囲の温度から約5℃低い風を送る。最大の効果を発揮するのは、温度が高く、湿度が低いとき。例えるなら洗濯物が乾きやすい環境だ。

屋内でも晴れてさえいれば、湿気は空気になじむ。風に湿度が含まれている分、エアコンの乾いた空気に長時間当たるよりも身体的な負担が少ないという。スポットエアコン(2口タイプ)に比べて消費電力を最大85%削減できる省エネ効果とともに、排熱が発生しないことも提案の切り口にしている。

関西エリアの営業責任者は、「排熱は温度上昇の原因にもなる。お客様のなかには、スポットエアコンの排熱を冷風機に吸わせて使っているところもあるほど。電気代の削減も含めて、暑さ対策と環境配慮は切り離せない関係になっている」と話す。

開放した空間で冷やすのが得意なシリーズのなかでも、汎用性を売りにした単相100V仕様の大型タイプを今春から本格的に発売した。「RKF711」の涼風到達距離は20㍍。上下左右のオートスイングで、三相200Vの電源がない倉庫や公共施設でも、左右7㍍(涼風到達距離9㍍のところでの涼風幅)まで送れる。

「同じ大型タイプでも、直進性に優れている三相200V仕様の『RKF702』に比べて、左右の広がりを27%アップさせた。昨年、限定50台で販売した反響はおおむね好評。災害時の緊急避難所、体育館のような全館空調のない施設、それに『密』を防ぐ目的でも使っていただけるはず」

操作パネルも一部改良した。ボタンで3段階までしか変えられなかった風量を、ダイヤルで無段階調整ができるようにした。風量は数字で表示する。「微調整が可能になったことで他機種の役割を兼ねることもできる」という。

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必要なところへピンポイントに冷風を送れる山善の「クールレボリューション」ダクト仕様

山善は、機工事業部のブランド製品「クールレボリューション」からダクト仕様を4月末に発売する。定格処理風量は毎分50~90立方㍍。ダクトを装着することで、必要なところへピンポイントに冷風を送れるようにした。

クールレボリューションは、体感温度12℃の冷風を、大容量で約50㍍先まで届けられるスポットクーラー。簡単に移動できるキャスターが付いており、大がかりな設備投資の必要がないことから「昨年の発売以来、暑さに苦しむ製造現場や物流現場などから好評を得ている」という。

今回製品化した仕様は、別売のダクトを吹き出し口に装着するというもの。コンテナのなか、間口の狭い倉庫など、必要な場所に無駄なく効率的に冷風を届けられる。そのほかにも、吹き出し口に電動式のオートルーバがついた既存品も併売する。

台風や地震などの自然災害が発生した際、避難所の冷房として使える点も特長に挙げる。「新型コロナウイルス感染症対策も必要ななか、開いた窓に向かって送風すれば、学校の体育館や講堂などでも、大容量の風を利用し、外気と循環させることもできる」としている。


気軽に持ち運びが可能に

よりコンパクトで軽く


片手で気軽に持ち運びができる。暑気対策製品も、その時代が到来した。機械メンテナンスや電気工事のような作業ごとに頻繁に移動する現場の場合、とくに威力を発揮する。「スポットクーラーや工場扇にキャスターが付いていても、距離や路面状況の都合で運べない。そもそも安定して置けるスペースがない」といったニーズもあって、ハンディータイプの需要が伸びている。

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片手で持ち運べるスイデンの「ハンディークーラー」。取手は折りたためる

スイデンが今年6月に発売する予定の「ハンディークーラー」は本体重量約8㌔グラム。幅202×奥行451×高さ253㍉と、工具箱のようなサイズに設計した。

営業推進部の東田和也係長は「『こんなサイズがほしかった』と思ってもらえるデザインにした」と話す。自動で首振りしない冷風1口型。現場の電源環境に左右されない100V仕様にした。現場作業、倉庫のほか、キャンプやガレージの使用も想定する。

冷房能力は033㌔ワット。冷風は「パワフル・強・弱・静」の4段階から選択できる。送風に切り替えて扇風機のように使ったり、タイマー(124時間)で切り忘れを防いだりといった機能も盛り込んだ。

なかでも、東田係長が最大の特長に挙げたのは内気循環できる構造だ。本体前方に冷風用、後方に排気用の吸込口を設けることで、周囲の排熱を取り込みにくくした。「テントのように閉じられた空間であれば、冷風口をテントのなかに、排気口を外に向ければルームエアコンと同じ構造で効果が一層高まる」という。

オプションとして、ダクトも用意した。冷風用は可動範囲内で自在に曲げられる仕様に。排気用は04~15㍍まで伸縮可能にすることで、排熱を室外や離れた場所に放出できるようにした。

気化熱の原理を利用して涼しくする。風に湿気が含まれている分、乾いた風に長時間あたるよりも身体的負担が軽いという声も少なくない。そのメリットに、持ち運びやすさを加えたのが有光工業のポータブル細霧「TEM―01」だ。

本体は幅541×奥行291×高さ282㍉(重量186㌔グラム)に設計。標準装備された5個のノズル(60Hzの場合、最大12個まで取付可能)から平均25ミクロンの霧を噴射する。イベント会場にあるテントの軒に沿ってチューブホースを取り付けたり、扇風機の外脇にノズルを直接装着させたりと、現場環境に応じて自由に配管できる。

噴霧方法はスイッチ一つで連続と間欠の変更ができる。出力は03㌔ワット。気軽に設置できることから、工場の酷暑対策としても引き合いが増えているという。

有光工業は「小型ながら本格ミストが噴霧できる」として、小さなスペースでも設置できる点をアピールする。工場や店舗などに常設で使いたい場合、広範囲に適用できる定置タイプもある。

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有光工業のポータブル細霧「TEM-01」

身体を直接冷やす

長時間作業にも対応


換気が利かず、汗も蒸発できない。「酷暑」と言われる厳しい現場で涼しくするには、身体を直接冷やすしかない。鎌倉製作所がシンプルな発想で提案しているのが「COOLEXシリーズ」だ。

チラーでつくった冷水(5~20℃)をウェア内で循環させるため、近くに炉や釜があっても長時間作業ができる。営業企画課の武政智幸課長によれば、「鉄鋼業、食品製造業を中心に引き合いが続いている」という。風が発生しないことから、塗装、溶接、溶断向けにも提案を強めている。

武政課長は、同じ装着タイプでも「ファン付作業着とは土俵が違う」と説明する。

「外気温に左右されないため、適応する周囲温度が異なる。つまり、水分蒸発で身体を冷やせない『酷暑』でも対応できるということ。COOLEXは、あくまで屋内向け。換気でカバーしきれない部分的なエリアでも活躍する」

作業シーンに合わせて、ラインナップを広げてきた。作業周囲温度55℃まで対応できる防塵・防水仕様、標準仕様に比べて半額以下に抑えた低価格モデルなどがそう。チラーも、薄型化で背負えるようにしたバックタイプタイプ、自由に持ち運べるキャリータイプなども製品化した。

大型チラーから配管することで、複数人を同時に冷却できるオーダータイプも芽が出てきた。使用人数は1~10名。作業範囲も最長70㍍まであるため、一人で複数の炉や釜を担当する場合でも「ワンタッチで脱着ができる」という。これまでに自動車、製鉄、路面表示材の関連工場に納めてきた。

導入時の障壁となっている価格面の対策として、202012月に標準仕様の価格を70万円から495千円に値下げした。武政課長は「ファーストインパクトは良い。現在、通常1週間2万円の体験デモを無料で受けられるキャンペーンを5月末まで実施している。ランニングコストも優位性も伝えていきたい」と話していた。

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羽織るようにして着用。パワーメッシュ素材で身体にフィットする。予備としてアイスパックだけの購入も可能だ(アイトス)

「作業服のインナーウェアとして開発したのが始まりだった」

アイトス商品部の井上翔氏はそう振り返る。2019年に発売した「アイスベスト」は、名前のとおりベストにアイスパック(保冷剤)が背中から脇の下にかけて4カ所入っているのが特徴。定価9500円という手軽さも相まって、移動頻度が多い工場や倉庫のスタッフやトラックドライバーで実績を伸ばしている。

保冷時間は「40℃の環境下なら、5~10℃の冷却効果を4時間維持できる」という。ゲルの配合にもこだわったアイスパックは、多層構造の断熱シートで冷気の放出を緩やかにすることで、保冷時間延長だけでなく、接触部の冷やしすぎによる低温火傷防止を図っている。

「装着による暑さ対策として『空調服』(ファン付作業服)が定番になったが、バッテリーで稼働するため、安全上使えない業界もある。大量の粉塵が発生する場所ともなれば、吸気でインナーが汚れてしまう。とくにそういった現場で喜ばれている」

作業服メーカー独自の視点も盛り込んだ。身体にフィットするデザインにすることで、しっかりと冷やせるうえ、アイスパックをずれにくくした。素材は通気性と伸縮性のあるパワーメッシュ素材を採用。2020年にはアイスパックを入れる脇ポケットを改良し、パック位置をマジックテープで微調整できるようにした。

発売当初はSサイズとフリーサイズで展開。反響を受けて、20年にXLサイズを追加した。アイトスは自社製品に「空調服」を組み合わせたモデルも各種取り扱っていることから、井上氏は「アイスベストとの併用がおすすめ」と話していた。