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物流最適化

コロナ禍における「新物流大綱」を読み解く

材料調達から生産、保管、配送までの期間が短くなっている。限られたスペースと人数でモノの流れをさらにスムーズにするべく、これまでのような人海戦術から設備投資による「省力化・機械化・自動化」に移行する動きが強まっている。つまり、ヒトにも、モノにも、環境にも配慮した物流の最適化が求められているということだ。


コロナ禍において、物流が果たす社会インフラとしての重要性は近年になく高まっている。こうした中、政府は615日、物流施策の指針であり国土交通省、経済産業省などの関係省庁が連携して施策を行う、新たな「総合物流施策大綱」(2021年度~2025年度)を策定した。

前大綱で掲げられた労働力不足、トラック積載効率の低迷、労働生産性の伸び悩みなどといった課題に対し、改善の兆しが見えぬまま、eコマースの急激な伸長、自然災害の激甚化に加えて新型コロナウイルス感染症の流行により、物流業界を取り巻く環境はさらに厳しくなっている

特に緊急事態制限などで人流が停滞する一方でモノの動きは活発化の一途を辿っており、今後さらに物流業界全体の労働力不足に拍車をかける可能性が極めて高い。

新大綱ではこうした状況を踏まえ、今後の物流が目指すべき方向性として、官民を通じ様々な取り組みを加速していく構えだ。なかでも「物流DXや物流標準化の推進によるサプライチェーン全体の徹底した最適化(簡素で滑らかな物流の実現)」では、生産財・消費財業界にとって関わり深い方向性が示されている。

物流最適化.jpg「物流デジタル化の強力な推進」では、手続き書面の電子化の徹底が掲げられている。現在書面や電話等で行われている民間事業者間の貿易手続や貨物集荷等の手続について、徹底したペーパーレス化を進め、書面手続ゼロはもとより、データ連携基盤の構築等によりマニュアルでの再入力作業をなくすことを目指す。またシステムの導入に当たっては、大手だけではなく中小の物流事業者や荷主等も活用できるように、汎用化された簡素なシステムの導入を検討する。

サプライチェーン全体の最適化を見据えたデジタル化については、川上から川下まで物流に関わるステークホルダーが一貫してシステムを活用できるようなデータ基盤の整備を目指すほか、発荷主・物流事業者・着荷主等複数の事業者の連携によるシステムの共有及び各種センサー、RFID等で収集・共有したデータの活用を推進していくという。

■トラック隊列走行、商用化へ

「労働力不足や非接触・非対面型の物流に資する自動化・機械化の取組の推進」では、サプライチェーン全体の自動化・機械化の推進が掲げられた。現在、幹線輸送や物流施設、配送といった個別の部分で自動化や機械化が進められているが、デジタル化と同様、サプライチェーン全体の取組として推進する必要があり、モーダルシフトや輸送網の集約、サプライチェーン全体でのシステム共有やデータ連携などの取組と合わせた自動化・機械化を推進することにより、物流効率化に向けた相乗効果の発揮を目指す。

倉庫等の物流施設における自動化・機械化の導入に向けた取組では現状、物流施設において、ピッキングやパレタイズを自動で行うロボットや無人フォークリフト、AGVの活用など、様々な機器やシステムの導入が進んでいる。これらの導入には相応の投資が必要となることから、そのインセンティブとして、国は「自立型ゼロエネルギー倉庫モデル促進事業」など導入支援策を講じている。また改正物流総合効率化法のスキームの活用も念頭にこうした支援を更に強化する。

幹線輸送における自動化・機械化の導入に向けた取組では、トラック隊列走行や自動運転トラックの物流への活用を促進する。ドライバー不足の解消、燃費改善などに大きな効果が期待できることから、車両等の安全を確保しつつ、技術開発や実証実験等の取組のほか、イノベーションに対応した道路の将来像について検討を進める。

特に、高速道路での後続車有人隊列走行システムについて、2021年中に商業化していくと共に、より高度な車群維持機能を付加した発展型を開発し、2023年以降の商業化を目指す。また隊列走行システムも含む運行管理システムを検討し、高速道路でのレベル4自動運転トラックについては2025年以降の実現を目指す。

■ロボット利活用をさらに推進

中小企業における自動化・機械化を促すための方策においては、中小の倉庫事業者や運送事業者などでは、コスト負担などから、事前に明確なメリットが確認されない限り、自動化・機械化に躊躇することも想定されるとしている。このため、中小事業者による物流DXの先進的取組やその効果等を整理した事例を公表するとともに、物流効率化の観点から特に秀でた取組を表彰するほか、機械導入等の設備資金に活用可能な金融支援策の利用を促進するなど、中小事業者の取組を促進するための方策を検討する。

ロボット産業の競争力強化のための環境整備では、ピッキング等を行うロボット、AGV、自動配送ロボットなど、物流業務を補助するロボットに関する技術革新・社会実装は、他業種への応用も含めたロボット産業全体の強化に資することから、技術開発や実証実験等に対する支援を通じて、ロボット産業の競争力強化のための環境整備をより一層進めていく。

ドローン物流については、現状、国や地方自治体の支援などにより離島や山間部等の過疎地域等において配送の実用化に向けた実証実験が行われており、その結果等を踏まえ、持続可能な事業形態等を整理の上でガイドラインとしてとりまとめ、具体的な配送ビジネスの社会実装につなげていく。

また自動配送ロボットについては、米国、中国等と比較して配送での活用に向けた取組は遅れており、今後、社会的受容性を確保しながら、持続的なサービス提供を可能とする必要がある。現在、「遠隔監視・操作」型の低速・小型の自動配送ロボットについては、道路使用許可を受けて歩道等における実証実験を実施しているところであり、引き続き、公道走行実証などを実施しながら、必要な制度整備を行う。また、自動配送ロボットを用いたサービスが可能となるよう、社会実装に向けた取組を加速させていく方針だ。