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「マテハン・物流」自動化の先へ

マテハンで自動化・省力化は当たり前の時代へ

マテハン機器による自動化・省力化が各所で進められている。コロナ禍にはEC関連や半導体関連など情勢を反映した業種向けが大きく伸びたが、ここにきてマテハン機器による自動化・省力化の推進は一過性のものではなく、全業種が優先的に取り組むべきものとなっている。2024年問題がすぐそこまでに近づいてきている今、率先して自動化に取り組んできた企業では人材の高度化や環境対策など、生産性向上・人員削減以外のポジティブ面も物流から引き出している。


物流の2024年問題を前に、モノを運ぶ現場では様々な問題が噴出している。特にエネルギー価格や人件費の高騰による輸送コストの上昇だ。(公社)日本ロジスティクスシステム協会(JILS)が4月に公表した「2022年度物流コスト調査報告書」によれば、2022年度(有効回答195社)の全業種平均の売上物流コスト比率は5.31%であった。過去20年間の調査と比較して最も高い数字となった前回調査の21年度(5.70%)よりは減少したものの、「近年、物流事業者からの値上げ要請などを理由に売上高物流コスト比率は、長期的な上昇傾向」(JILS)にある。「製造業を中心として、商品・製品・サービスの価格改定(値上げ)がなされる一方、商品値上げ幅に比べて、物流単価の上昇が追従していないため、売上高物流コスト比率が下がったという側面も否定できない」とも分析しており、実際は物流コストが上昇している可能性を示唆した。

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人手不足も深刻だ。厚生労働省の調査によれば、自動車運転の職業の有効求人倍率は約2.5倍と他の職業計に比べて約2倍と非常に高い水準だ。政府が昨年9月に設置した「持続可能な物流の実現に向けた検討会」では、労働時間の短縮や人手不足の影響で、30年度には2019年度の貨物輸送量などと比較して、輸送能力の34.1%(営業用トラックの輸送トン数換算で約9.4億㌧相当)が不足する可能性が示唆されている。そのため、フィジカル・インターネットやモーダルシフトなど、輸送方法・手段の改革が2024年問題解消への対策の中心とされてきた。

一方で、コロナ禍に進んだサプライチェーンの見直しの一環で広がりつつあるジャストインケースの考え方は、リードタイムの維持・短縮に役立つ。長距離輸送前提の物流ネットワークから脱却し、顧客への配送距離を短縮するためにも、高効率収納可能で、在庫管理や入出庫がしやすいシステムを確立しているマテハン機器を使い、拠点改革を進めることが一層重要となりつつある。

■スタートアップや海外勢が新分野開拓

JILSは同アンケートで22年度に「実施予定の物流施策」の調査もしている。そこでの1位は「物流デジタル化の推進」であるが、3位には「自動化・機械化の推進(マテハン・ロボット自動倉庫等の導入など)」が入ってきている。21年度調査では実施予定社数が8社であったのに対し、22年度では13社になるなど関心の高まりを見せている。

そうした中、選ばれる製品・メーカーにも変化が見られる。スタートアップや海外のマテハン機器メーカーが分野や市場を拡大している。AMRを提供するラピュタロボティクスは群制御の技術を応用することで、4月から自動フォークリフトの販売を本格的に開始した。自動搬送ロボット「Skypod」などで倉庫の自動化ソリューションを提供するExotec Nihonは導入数の増加を受け、東京・新木場に「東京でもセンター」を新設するなど、国内市場への働きかけを加速させている。

このように、自動化・省力化に向けて導入が進むマテハン機器だが、JILS5月に行った物流改善事例大会では自動化・省力化機器の導入が、単なる生産性向上や人手不足を背景として取り組まれるものではないことも示された。現場の自動化・省力化は人材の高度化や高度人材の定着化においても大いに役立ち、今や物流設備・機器が大きな差別化要因となりつつある。

(2023年8月25日号掲載)