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連載 扉の先〜自動化時代の挑戦者たち

扉の先47/斬れ味抜群のロボットマシニング

【インフィニティソリューションズ】5軸の不可能を「7軸」で可能に

オレンジ色のロボットアームが、アメリカンコミックの女性主人公の彫像を、細部に至るまでリアルに切削していく――。

「KATANA」内部。KUKA製ロボットにツーリングシステムを搭載

5軸加工機をもってしても不可能な加工を実現するのが、インフィニティソリューションズのロボットマシニングセンタ「KATANA」だ。

同社はCAD/CAM開発・販売、射出成形用金型の製作、ロボットSIer3つの事業をメインに展開しており、モノづくりの上流から下流までを深く広く網羅している。「KATANA」はその知見を活かして開発された。

これまでロボットによる切削は、位置決めやロボットの剛性といった面から、精度が出しづらいと言われていた。そこで同社は、高い剛性で定評のあるKUKA6軸垂直多関節ロボットと、三共製作所のロータリーテーブルを組み合わせた。これによって繰り返し精度±002~006㍉を実現した。

7軸による加工メリットは、なんといっても通常の加工機では入り込めない部分に工具が届く点だ。従来、段取り換えが必要だった複雑形状のワークをワンストップで加工することができる。

これらの加工を可能にするのがKUKA独自のKUKA.CNCだ。「マシニングセンタと同等の高精度輪郭制御を搭載しており、NCデータでの動作が可能です。また、100万個までの経路ポイント間隔を微小データに変換し、150個先の加工軌跡を判断します。言わば金型の3次元加工と同じ働きをします」(インフィニティソリューションズ・小山田聡社長)。

切削専用のツーリングシステムはATCにも対応。標準搭載の画像カメラがツールチェンジ毎にワーク原点検出、工具長の測定、工具の破損検出などを行う。

「これまで6軸ロボットでの基準点出しはかなり煩雑な作業が必要でしたが、KATANAなら簡単な操作で基準出しができます。また用途によって製品測定や判定が可能な画像測定装置もご用意できます」(小山田社長)

■木工、樹脂加工及び教育機関の開拓へ

KATANA」は切削だけではなく、研磨やバリ取り用途にも対応する。ロボット側のフランジにチェンジャーを装着することで、切削、バリ取り、画像認識など用途が異なる作業工程を可能にし、工数削減や自動化を実現する。

加工室内をクリーンな環境にするため、本体の背面部には集塵機を配置。加工する材質によって防爆仕様・オイルミスト仕様にも変更可能だ。ストロークや可搬重量が異なるロボットアームや、ワークサイズに合わせたロータリーテーブルの変更、ツーリングシステムやワーク搬送、自動クランピングなどの完全自動化システムなど、ユーザーニーズに合わせた豊富なカスタマイズメニューを用意している。

これらの機能を内包する筐体のデザインにもこだわった。各種アラートは、従来のような三色のパトライトではなく、本体の四隅に埋め込まれたLEDが表示する。マシニングセンタ同等の制御をつかさどるワークステーションは、本体への出し入れが可能。省スペースかつ、シックでシンプルな概観を実現している。

KATANA」が斬り込む市場は、木材加工や樹脂加工、金属の代替材料として活用の拡大が見込まれるCFRPGFRPといった複合材など軟素材の加工現場だ。

「木材加工は意外と自動化が進んでおらず、いまだに熟練の職人の腕頼みというところも少なくありません。これを自動化するとなるとオーダーメイドになってしまい必然的にコストも高くなりますし、設備の占有面積も大きくなりがちです。こうした現場にコンパクトかつ使いやすく、導入しやすいパッケージとして、KATANAを提案していきたいです」(小山田社長)