日本物流新聞生産財と消費財の業界専門紙として半世紀を超す実績。
日本物流新聞社のWEBサイトでは、
ものづくりを支える工作機械、工具、ロボット、産業機器等の情報から、
ハウジングはじめ住まい・暮らしの様々なニュースをお届けしています。

検索

News

空き家を「預ける」という選択肢

改修後の物件

負担のない空き家活用法「ヤモタス」とは

 空き家が生まれる要因の1つに挙げられるのが、活用ハードルの高さ。賃貸運用にはリフォーム費用がかかるうえ、素人が収益を上げるのも難しい。売るにしても立地や状態で買い手がつくとは限らず、そもそも思い入れがあれば手放すのに抵抗がある。かくして家を放置してしまった結果が各地での空き家の増殖だ。状況を変えるには、空き家活用を簡単にする新たな仕組みが必要といえる。
yamotasu.jpg

松久保正義代表

 20218月に始まった「ヤモタス」は、この問題に一石を投じるサービスだ。賃貸経営のサポートを行う和工房(愛知県半田市)が手掛ける空き家運用代行サービスで、特徴は「所有者の負担0円で空き家活用ができる」こと。その仕組みを、和工房の松久保正義代表は次のように話す。
 「我々の本業は賃貸経営のサポートで、物件調査や改修を一括支援しています。自らも賃貸経営を行っていて、賃貸経営の知識を学ぶコミュニティも作っています。ヤモタスはそのコミュニティから『運用者』を募り、空き家の所有者から物件を預かって出資いただく形。我々はリフォームと管理を行い、賃料からリフォーム等の経費を引いた利益を所有者と運用者が分ける仕組みです」
 空き家の改修費は運用者が負担し、所有者が払うのは税金だけ。物件を預けるだけでオーナーには利益の4~8割(立地や改修の程度次第)が還元され、契約期間の13年が終わればリフォーム済み物件が手元に戻る。オーナー側のリスクをここまで取り払ったのは理由があるという。
 「実は8年前から空き家を購入・再生し賃貸運用していますが、全国の空き家は約850万戸。正直、このスピードでは何の役にも立たないというジレンマがあったんです。売りに出る家は空き家全体の35%というデータもあり、残りの965%に動いてもらわないと空き家問題はどうにもならない。そこで、リスクも労力もゼロでしかも収入になる仕組みとして考えたのがヤモタスです」

■13年間のモラトリアム

 対象は名古屋市から車で1時間前後の東海3県。空き家を預かれるか=収益ベースに乗せられるかは和工房が厳しく査定するが、リフォーム費用を最適化することで意外にも相談のあった物件の7割は預かりが可能だという。戸建て賃貸は需要の割に供給が少ない。これまでヤモタスで預かった物件もすぐに入居者が決まり、郊外でも有効活用できる物件は多いようだ。
 ところでヤモタスでの和工房の利益はほぼリフォーム工事のみ。松久保代表は「キャッシュポイントはよく聞かれますし正直利益は薄いんですが」と笑い、こう話してくれた。「まずはこのサービスを広めるのが先決と思っているので、当面は『まっ、いいか』という感じです。所有者に伝えたいのは、とにかく『空き家を放置しないで』ということ。新たな空き家の活用法を僕らは選択肢の1つとして提案できます。仮にそれがヤモタス以外の形でも、とにかく何とか活用してほしいですね」
 ヤモタスで預かった物件は契約が終わる13年後には所有者の手元に戻る。松久保代表が期待するのは、その13年間に所有者が物件の今後を決断することだ。「自力で運用するのか家を畳むのか。ヤモタスが預かる13年が、その決断の助けになればと思います」

Rの時代.jpg

改修前(左)と改修後の物件

(2022年12月25日号掲載)