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クリナップ、移動式キッチンを初披露

クリナップの竹内宏社長(左)と武蔵野美術大学・ソーシャルクリエイティブ研究所の若杉浩一所長

武蔵野美大と次世代キッチン開発

 クリナップは37日、武蔵野美術大学の市ヶ谷キャンパスで「未来キッチンプロジェクト」産学共同発表会を開いた。プロジェクト内で研究を進める「次世代キッチン」のひとつとして、未来のライフシフト対応や災害支援に貢献できる移動式キッチン「モビリティキッチン」のプロトタイプを発表した。
 モビリティキッチンは、シンク・コンロ・調理台の機能を持った3つの箱型ユニット(600×480×200㍉)からなる。それぞれがメインキッチンとして使用できる性能を有していながら、女性一人でも簡単に移動できるサイズで生活シーンや暮らしの移り変わりに合わせて柔軟に変化できる。
 同社は2019年より武蔵野美術大学と産学共同で「キッチンの未来ビジョンづくり」をスタートさせ、社会課題に対しキッチンが貢献する可能性を模索してきた。23年に発足した未来キッチンプロジェクトでは「脱LDK」をテーマに研究開発を進めており、モビリティキッチンもその一環。取り組みを主導してきた同学・ソーシャルクリエイティブ研究所の山﨑和彦特別研究員は「社会課題に貢献するには、家の中だけでなく社会の中で料理を食べることが大切。特に日常的な『いつも』と災害時などの『もしも』をいかに両立するか」とモビリティキッチンの開発背景を語った。
 キッチンのモビリティ化にあたり最も大きな課題が給排水だ。工業用フィルターなどを手掛ける三美製作所の協力を得ながら開発した独自のろ過装置は、シンクユニットの大きさを変えることなく小型化に成功。バッテリー駆動かつフィルターの衛生性を保つ逆洗浄機能を搭載しているため、もしもの際の長期間の独立稼働にも向く。開発の中心を担った同社・開発戦略部商品戦略課の近岡咲主任は「給排水を家から切り離すことで場所を選ばない自由で新たなライフスタイルを提案する。実証実験では自由に使える水があることで、野外でも自然と日常の調理と同等頻度で手や物を洗うことができた。気兼ねなく水を使えことに大きな可能性を感じた」と話す。
 同プロジェクトのリーダも務める同社の竹内宏社長は「ライフスタイルが多様化・自由になる中で、キッチンがLDKに固定されたままでよいかに強く疑問を持つようになった」とし、「山﨑先生の豊かな見識、学生からのフレッシュな意見によって当社は良い刺激を受けた。プロジェクトは確実に前進している」と手ごたえを話し、2030年までに次世代キッチンを事業化していく考えを改めえて示した。

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(写真=ホンダアクセスの協力でN-BOXからの取り出しデモも行われた

2024325日号掲載)