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進まぬ食品業界の自動化

急激な人手不足でロボットやマテハンのノウハウ活用も

韓国発のとんかつロボット

農林水産省が策定した食料生産の方針「みどりの食料システム戦略」では2030年までに食品製造業の労働生産性を3割以上向上させることを目指している。現在(20年)、労働生産性(付加価値額÷総人員)では、製造業全体が7362であるのに対し食品製造業は4836と低く、AIやロボットなどを活用した自動化が急務になっている。また流通の合理化を進め、飲食料品卸業における売り上げに占める経費の割合を10%へ縮小を図ろうともしている。

生産性.jpg日本の食品企業は、中小企業が多くデフレ下の価格競争のし烈さもあり自動化・ロボットの活用などの設備投資を後回しにしてきた。また「具材を載せるにしても、エビの天ぷら、ちくわ、おあげと種類が多く、少量多品種を製造している。協働ロボットを使ったとしても、毎回セッティングをし直すとなると、まだまだ人の手でやったほうが早い、という経営判断になる」(うどんなどを製造する恩地食品・恩地宏昌社長)、「展示会などでロボットや自動化提案をみると『いいなー』と漠然とは感じる。ただ、各作業工程自体は一定程度機械化されており、人がやっているのはイレギュラーな対応で、それを自動化できるか、コストに見合うか、と考えると具体化までは進みにくい」(即席麺を製造するイトメン・伊藤充弘社長)と話すように、各社各様の課題が絡み合い、自動化へ一足飛びに進みそうにない。

■まだまだロボットよりは人手

しかし「昔は時給をあげれば応募はあったが、今は時給をあげても来ない」(食品工場関係者)というように、過去類を見ない人手不足である。これを商機と考え、自動車業界などで培ったロボットや自動化、マテハンのノウハウを食品業界へ活用しようとの機運も高まる。

食品工場の自動化もテーマの一つに掲げるフードテックジャパン大阪(インテックス大阪・38~10日)に出展したショウワの藤村俊秀社長は「コンテナの洗浄ラインを提案している。ロボットを使うことで無人化が可能になっている。昨年ぐらいから人手不足の影響で導入が増えてきている」と話す。「食品工場でロボットまでは、という時代も長く、かつて売り上げのほとんどが自動車関連だった。今は自動車以外の売り上げが大きい」とし、10年のタイムラグで食品業界に自動化の波が来ているとの認識を示した。ほかの、あるブースではマテハンで培った技術を食品業界へ活用する提案も見られた。担当者は自動車関連産業売り上げが大きかったが、今は食品カテゴリーが伸びていると話した。

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コンテナの洗浄ラインを前にショウワの藤村俊秀社長

■韓国のとんかつロボット上陸

韓国企業のCOBOTSYSはとんかつを揚げる協働ロボットシステムを提案していた。ファナックの協働ロボットを使用しニードルクリップとシステムやソフトウエアを自社開発した。韓国では、3店舗で導入されているという。パクジェイル社長は「韓国同様に人手不足や人件費高騰の問題が顕著化する日本でもニーズがある」とみる。

食品業界では、蒸す、焼く、揚げる、袋に詰める、など工程一つ一つの機械化は一定程度進んでいる。そのうえで自動化、ロボットの活用となると大手企業以外は、まだまだ他人事である。そのような中、機械化すらまだ十分には進んでいない手延べそうめん業界で19年末、揖保乃糸を生産する兵庫県手延素麺協同組合が供給、包装、箱詰め、封函までをすべて自動で行う完全自動包装システムを稼働させた。オークラ輸送機のベルコンミニと各種機械が組み合わされた設備で、8人を省人化し、加工生産能力は以前の年間45万ケースから30%以上アップした。そうめんは夏の一時期に出荷が集中するため、この作業がパンクすると全体の業績に響く。出荷最盛期の安定化で、他産地にはない優位性を手に入れた。

(2033年3月25日号掲載)