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スタートアップ育成へ5年計画始動

国内ユニコーン100社、達成なるか

政府主導の「スタートアップ育成5か年計画」が本年、いよいよ始動する。岸田首相は「新しい資本主義」の実現に向けた重点分野にスタートアップ支援を掲げており、満を持して昨年11月に発表されたのが、冒頭の5カ年計画だ。日本ではかねてより「ユニコーン企業」の少なさが指摘されている。政府はスタートアップへの投資額を27年度までに10兆円規模へ引き上げ、ユニコーンも100社へと増やす野心的なプランで挽回を図る。


■経団連が重視

スタートアップはSociety5.0を担う存在――

Society5.0を実現させようとする経団連(〈一社〉日本経済団体連合会)がそのカギと考えるのがスタートアップの存在だ(経団連は20195月にスタートアップ委員会を立ち上げ、その振興に取り組んでいる)。産業構造の転換、産業の新陳代謝には大企業が変わるだけでは不十分で、ビジョンドリブンで課題解決や価値創造に挑戦するスタートアップの存在が不可欠という。

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背景にあるのは競争力のある日本の新興企業の少なさだ。時価総額10億ドル超の未上場企業は米国に520社あるのに対し日本のそれはわずか6社にとどまる(経団連調べ、222月)。そこで経団連は現在1万社にとどまっている日本のスタートアップを5年後までに10万社に増やすべきと働きかけを強めている。

国も動き出している。岸田首相は就任時に掲げた「新しい資本主義」を実現する具体的な手立てのひとつとして、スタートアップの支援強化を明確に打ち出している。昨年10月には分科会を立ち上げて支援策の具現化に着手。同11月には「スタートアップ育成5か年計画」を発表し、過去最大規模となる約1兆円の予算措置を閣議決定した。

政府による国内スタートアップ企業への投資額は現在年間8千億円ほど。これを5年後に10兆円規模に引き上げ、ユニコーン企業(企業価値が10億ドル以上、設立10年以内の未上場企業)の数を将来的に100社まで増やす野心的なプランだ。実現性には不透明な部分もあるが、国内スタートアップ企業の競争力強化に向けた取組みが加速することは間違いない。

■展示会の目玉に

新興企業のけん引力は展示会にも見られる。例えば、今年6月に東京で開かれる食品機械技術展「FOOMA JAPAN」はそうした新たな勢力を軸として盛り上がりを見せそうだ。

昨年11月に出展申込受付を締め切った主催の日本食品機械工業会は「出展申込は前回を約60社上回る大幅な増加が見られた。出展者数・展示面積ともに過去最多になるのは間違いない」と話す。出展者数の増加は昨年から始めたスタートアップゾーンで顕著に見られる。「新興企業だけで30社と昨年より11社増える。昨年、出展スタートアップ企業による1時間に2回の会場での説明会は毎回ほぼ満席だった。今年もIT・ロボット・AI関連企業が食品工場のDX化を食品業界に打ち出すことになるだろう」と見る。

スタートアップが重要と捉えるのはもちろん日本だけではない。ドイツで417~21日の5日間開かれる世界最大級の産業見本市「ハノーバーメッセ」も、スタートアップに技術革新のドライバー役を期待する。主催のドイツメッセは「若いアイデアがマーケットに持ち込まれる。大きな課題を解決するのにその重要性がますます高まっている。今後の産業革命のカギとなり、ハノーバーメッセの将来像になっていく」と展望する。

やはりドイツで開かれる世界屈指の工作機械関連展EMOショー(918~23日)も同様に出展する新興企業に期待を寄せる。主催のドイツ工作機械工業会(VDW)は「国際的なスタートアップにとって効果の高いショーとなるよう準備している。これには日本の新興企業もこれまで以上に参加することになる」とコメントしている。

このように大きな期待がかかるスタートアップだが、直近の世界情勢を鑑みると少なからぬ逆風も吹いている。特にシリコンバレーの新興IT企業やベンチャーキャピタルへの出資で知られる米・シリコンバレー銀行(SVB)の破綻は金融市場に衝撃をもたらし、ようやく緒についた国内スタートアップへの投資に冷や水を浴びせかねない。逆風を寄せ付けない成長性を見せられるか、新興企業にも地力が問われる。

(2023年3月25日号掲載)