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脱炭素化支援機構が創立 

リスクマネー呼び込み脱炭素化加速

産業界でも省エネ、効率化、新素材など叡智結集

「株式会社脱炭素化支援機構」創立総会であいさつする西村明宏環境大臣

「株式会社脱炭素化支援機構」が昨年1028日に設立された。改正地球温暖化対策推進法に基づき、国の財政投融資からの出資と民間からの出資を原資にファンド事業を行う。モノづくり産業では新素材、バイオ素材、省エネ建材・製鉄・化学・セメント産業などのプロセス、再エネ・省エネ・蓄エネ機器製造、ZEBZEHなどを支援対象と想定する。資金供給を希望する場合は、事業概要などを添えてメール(contact@jicn.co.jp)で連絡する。西村明宏環境大臣は創立総会で「今後10年間で150兆円もの脱炭素投資を実現する政府方針の先駆けとなって資金を供給し、多くの脱炭素プロジェクトを創出する」ことへの期待を語った。

環境省によると、エネルギー起源CO2排出量は96700万トン(電気・熱配分後排出量・2020年度確報値)。最も多いのが産業部門で37%、続いて運輸部門19%だ。

とはいえ産業部門に属する多くのメーカーも脱炭素ソリューションを提案してきた。オークマは新世代省エネルギーシステム「ECO suite plus」を提供する。各補機を不要な時はオフにし、消費電力を削減。必要な冷却装置は、「サーモフレンドリーコンセプト」技術を応用し高精度を保ったままアイドルをストップ。昨年のJIMTOF40番機と比べ省エネ性能に勝る30番のマシンを積極提案したのはブラザー工業。担当者は「現場の経験が長い人に『30番機で本当に削れるのか』と疑われることもあるが我々の答えは『削れます』」と自信の一言。牧野フライス製作所らが共同開発した新素材ATHIUMはヤング率をねずみ鋳鉄と同等に維持したまま60%軽量化した鋳造品。工作機械の可動構造物に採用することで高い信頼性と省エネルギーを実現。CO2排出量・消費電力を50%削減したミストコレクター「オニカゼ スマートミストマジック」を上市した赤松電機製作所。遠心力を利用した捕集構造で、ワンサイズ小型のモータで稼働する。

産業部門のエネルギー起源CO2排出量(35600万㌧・20年度)のうち11%が機械製造業だ。3番目に多く年間3910万㌧を、なお排出する。

■炭素繊維再利用で脱炭素実現

「炭素繊維複合材料(CFRP/CFRTP)」は、軽量化による燃費向上に欠かせない航空機部品や自動車部品を中心に適用が進んでいる。富士経済の調査では35年におけるCFRP市場は34958億円(20年比28倍)になると見ている。航空機用途や風力発電のブレード大型化によるCFRPの需要拡大を見込む。CFRPよりも大幅に成形加工時間を短縮できるCFRTPについても、自動車を中心に市場が広がり、35年には3524億円(20年比86倍)まで伸びるとされる。

一方、CFRPはリサイクルや廃棄時に多くの課題がある。矢野経済研究所の調査では「日本はバージン炭素繊維の生産量が世界一。CFRPリサイクル分野での競争力強化は重要」としながらも「廃CFRPの排出量が日本の約4倍の欧州や約5倍の北米で、エアバス社やボーイング社等中心にCFRPのリサイクル技術やサプライチェーンの構築が先行している」と指摘した。

そのような中、旭化成はNEDOの採択プロジェクトにおいて、北九州工業高専と東京理科大学の3者で連続炭素繊維をリサイクルする基礎技術を開発。CFRP/CFRTPの樹脂成分を分解する「電解硫酸法」により、炭素繊維を取り出してリサイクルする。「自動車から廃棄される炭素繊維を連続炭素繊維としてリサイクルすれば、高品質かつ安価なCFRTPによる自動車軽量化、それに伴う省エネルギー効果が期待できる。30年頃の社会実装を目指す」(同社)という。

リサイクルシステムが確立し、炭素繊維使用による燃費向上が一層進めば脱炭素に向けて有効な一歩となる。

(2033年3月10日掲載)