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マテハン提案大解剖

積載するモノに応じて、捕縛の仕方を変えられる
(花岡車輌のDANDY Xシリーズ「type XL」)

モノの全体的な流れに合わせた投資が求められる「マテハン」に注目した。生産性だけでなく、働きやすさ、労働安全衛生の観点からも、これまで当たり前だった作業と工程を見直すべき時期が到来しているからだ。身体的な負担を減らしながら、スムーズに運べる現場づくりに向けて提案を強めている製品に焦点を当て、ユーザニーズの変化と導入効果を探った。


自然体で無理なく運ぶ

新しい台車のカタチ


「台車メーカーの怠慢でしかない」

花岡車輌の花岡雅販売企画室長は、そう苦笑いした。

1月下旬に発売したDANDY Xシリーズの新型モデル「type XL」は、荷物をゴム紐で捕縛できるようにした。最大のポイントは、台車のフレーム側面にある9カ所の溝。荷物のサイズや形状、置き方、積み方に合わせて、ゴム紐を引っかけることで荷崩れを防ぐ。

縦、横、斜めにテンション(張力)が働くため、縛り方も多彩。「V」「X」「Z」といった方法も可能だ。花岡室長が想定するのは、まっすぐな道でも、まっすぐ走れないところ。

「歩行者、自転車、車、段差を避けながら、勾配に流されないようにするには、どうしても左右のバランスを取る必要がある。荷崩れしないためには、二人がかりで1台を運ぶか、積載する量を減らして数回行き来するか。いずれにしても余計な手間がかかる」

紐による荷崩れ対策はシンプルな発想だけに珍しくない。花岡室長が主要なECサイトを調べたところ、「一緒に買われるケースが多数あった」という。

「台車のアピールポイントと言えば『軽い』『静か』ばかり。これ以上追求しても感覚的には分からないところまで達した。荷崩れを防止する台車をこれまで開発しなかったことに対して、『申し訳ありません』という気持ちしかない」

ゴム紐を引っかける溝の形状にこだわった。入口に大きな切り込みを入れることで、手元を見なくても引っかけやすくし、溝の奥は最適なテンションを維持できる幅に設計した。ユニバーサルデザインを意味した「UDフック」として意匠登録も完了している。

「開発当初は完全になめていた(笑)。どの位置、どの組み合わせからもテンションがかけられ、紐が重力で落ちないようにするために、3Dプリンタで試作を繰り返した」

横揺れの点も考慮して、溝は9カ所に。フレームの耐久性が下がらないように、「素材以外はすべて見直した」という。ゴム紐両側は、フック型の金属ではなく、輪にすることで反発による怪我を防止している。

結果論ながら、こういった取り組みが想定外の利点を生んだ。フレームをゴム紐で囲うようにすれば、衝撃を和らげるバンパーの役割を果たすというものだ。花岡室長は「格好良いデザイン案を捨ててまで考えたかいがあった」と振り返る。

「『こう捕縛するのが最適』というのはない。何を置くのか分からない台車にとって、そういったのは煩わしいだけ。荷物の特性に合わせて使っていただければ」として、工場、倉庫だけでなく、配送、イベント、小売など、幅広い業界に対して提案する。

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をくだ屋技研の「プッシュシリーズ」は、ハンドルを握るだけでアシスト機能が作動する

握るだけでアシスト


台車による搬送作業で「押す」「引く」は意識しなくてもできる動きだ。

をくだ屋技研の「プッシュシリーズ」は、そういった自然体で軽く動かせることを重視して開発された。性別、年齢、国籍、身体能力などに関係なく、誰でも使えるようにしたことで、将来予想されている少子高齢化や生産年齢人口低下も見据えたツールとして提案している。

油圧昇降式台車と手押し台車で展開しているシリーズの特長は、アシスト機能を備えていること。ハンドルを握って、押したり引いたりするだけでセンサーが反応。小型モータが作動し、搬送作業で最も力が必要な初動時、さらに走行時の抵抗を削減する。

最大積載質量は250㌔グラム。ハンドルから手を離せば、自動停止する構造になっているので、作業中の事故も未然に防げる。

自動化や機械化が難しい「モノの流れのすきま」に向けた製品。台車が最も得意とする領域として、市原浩一技術本部長も自信を見せる。

「『すきま』と言っても、搬送全体で見れば人が関わる割合は依然として高い。ロボットの強み、機械の良さもあるが、自動化によって、むしろ効率が悪くなることもあるだろう。従来の弱みをプラスに変えるマテハンとして開発した」

ハンドルを握るだけでセンサーが反応する仕組みにしたのは、アクセル操作のような経験や感覚を不要にしたかったから。市原本部長は、「『人生100年時代』と言われているが、身体的な力が必要な作業が多かったり、専門知識がなければ動かせなかったりと、高齢者、女性、外国人スタッフが活躍するための課題は山積している。人手不足は、製造業、物流・倉庫業界も例外ではない」と、プッシュシリーズの必要性を説く。

アシスト機能の心臓にあたる制御部分は、歩行介助機器のマイコンチップを応用した。パネルは電源と設定のボタンだけ。電源のONOFF、電池残量(30%未満)、傾斜時の注意喚起などは、音声ガイドが教えてくれる。

「日本語、中国語、英語に対応している。走行時間に応じて『そろそろ休憩してください』と言ったり、終了後には『お疲れ様でした』と労いの言葉もかけたりしてくれる(笑)」

動力減は100Vコンセントで充電できる小型リチウムイオンバッテリーを採用。予備分も用意することで、連続稼働を可能にした。シリーズに関連する動きとして、同社製のリフトテーブルや台車にアシストユニット単体を後付けできる取り組みも実施。「ある程度サイズを限定して、後付けに対応している」という。

金属加工、運輸以外に、三品、医療現場に向けた販路開拓も進める考えで、本社のある堺市や地元商工会議所との連携も図っているところ。「まずプッシュシリーズの認知度を高めつつ、ビジネス以外の困りごとにも生かす方向で模索していきたい」としている。

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天井や梁にクランプを挟み込むだけで設置が完了する(象印チェンブロック「軽レールクレーン」)

生産ラインを崩さない

誰でも使える手軽さと柔軟性


現状の生産ラインを崩さずに、クレーンによる搬送がしたい――。その声に応えた象印チェンブロックの「軽レールクレーン」は、天井や梁にクランプを挟み込むだけで設置が完了する。後付けしやすいため、ライン変更にも適宜対応できるわけだ。

津田晴將常務は、「穴加工、乾燥、溶接などの工程もいらない。当社が施工まで担当するので小回りが利くうえ、短期間で設置が完了する」と説明する。ジョイントによる連結でレールの延長も可能なことから、生産ラインにあった使い方ができる。

昇降作業による身体的な負担を軽減する本来の役割以外に、手待ちの時間を減らせる点もメリットに挙げる。

「大型クレーンは工場に何基もないだけに、搬送やワークの向きを変えるにも『クレーン待ち』が起こってしまいがち。出荷時、一人で荷さばきするときには『人待ち』になることもある。当社製品なら、用途に応じてレーン上にクレーンを複数設置できるのでこういった無駄が省ける」

リモコン操作で荷物を上げた後、手で押すだけで動かせるのも魅力。上下、左右、ななめ、曲線など、人の動きに合わせて滑らかに動かせることから、津田常務は「カーテンレールをスッと開くようにわずかな力で動かせる。行きたいところへダイレクトに向かう『(パソコンの)マウスのような感覚』に近い」と話す。

小さな力で荷物を押し、続いて上のクレーンが追っていく動作は、停止時の荷振れを最小限に抑える役割も果たす。なめらかな曲線運動で、途中にある障害物も避けて通れる。

最大可搬重量は約1㌧。設置場所に合わせて、レール、トロリ、クランプ、サスペンションなどを多数用意している。「ボリュームゾーンは100~490㌔グラム。80㌔グラムの小型タイプもよく売れる。クレーンも含めて現場に合わせた組み合わせはいくらでも提案できる」という。

強度と安全性の向上を目的に、レールをモデルチェンジした。2枚の鋼板を溶接する従来の工法から、1枚の鋼板を折り曲げて製作する方法に変更した。

津田常務は、「見た目もシャープなデザインに刷新している。メッキにカラーフィルムを貼り付けているので、三品業界にも使っていただけるはず。ダクトの有無など、現場の制約があっても、最適な施工方法を提案できるのも当社の強み。軽レールクレーンに限らず、使い勝手とコストメリットの観点から、さらなる改善提案を進めていきたい」との考えを示した。

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狭い通路でも無理なく移動できる佐野車輌製作所のバッテリー台車「SDWA」

重量搬送にバッテリー台車


近距離ながら、屋外移動を伴う重量搬送に最適なマテハン機器は何だろう。移動させるのは総重量40㌧のプレス金型。当然のことながらクレーンが使えないため、トラックやフォークリフトに限られる。前者は場合によって借りなければならないし、後者も操作に運転免許が必要だ。そこで佐野車輌製作所は第三の選択肢としてバッテリー台車を提案している。

野口幸治営業部長は、「トレーラーに積載して牽引車で運ぶ方法もあるが、私有地外で運転する場合は免許がいる。バッテリー台車ならクレーンと同じペンダントスイッチによるボタン操作なので、誰でも簡単に扱える」と話す。

ボタンは前後左右のみ。時速は16㌔メートル。人がゆっくり歩く程度のスピードだ。磁気テープやレールを敷設する必要がなく、既存の生産ラインに影響を与えずに、導入したその日から使えるのも魅力。自動車のプレス金型、組立途中の半製品を次工程に搬送する目的で使われることが多いという。

「パレットに載せてフォークリフトで運ぶ方法も手軽ながら、10㌧以上になれば安定しにくくなる。安全性を重視する傾向が年々強まるなか、バッテリー台車に変更するケースが増えてきた。別の観点から見れば、生産品目が大型化しているということもあるだろう」

狭い通路向けで実績を伸ばしているのが、4輪操舵式の「SDWA」だ。切り返しなしで走行できるのが最大の特長。旋回半径が小さく、直角通路も難なく通れる。

ラインナップは積載荷重5~50㌧の6機種展開。回転灯、警報機、タイヤ切れ角表示灯などの安全機能を標準装備している。稼働時間は約2時間。AGVとしても活用できる。

ホームページには2013年以降に納入した実績を掲載している。納入先、製品分野、積載荷重を一覧化したものだ。野口部長によれば、「当社への信頼、製品への安心につながっている。グループ会社で稼働されていることを知って、現物を見た後、導入が決まることもある」という。

「バッテリー台車自体は以前からあるもの。ユーザーの裾野が広がるに従って、アフターフォローがさらに重視されるようになった。当社は30年前の図面を大切に保管し、補修部品も内製化しているので迅速に修理できる。そういった強みも伝えてきたい」


極省スペースでパレタイズ

3kg以下で毎分12個処理


1枚のパレットと、その周辺でスタッフが一人動けるだけのスペースにパレタイザーが置ける。装置サイズで言えば、幅1.83×奥行2.46×高さ2.33㍍(設置スペース=0.68坪)。安全柵もいらない。

製品化したPSSが最大の売りにするのは「極省」だ。既存の生産ラインに追われるように設けられた狭い製品出荷スペースにも置けることから、食品事業者を中心に実績を伸ばしてきた。

2019年に発売した「PAL―AH01A」は、パレットとカートン(箱)がそれぞれ独立して持ち上がる機構を採用。水平移動だけでカートンの配置をできるようにしたことで、パレットへの積載スピードを大幅に高めた。3㌔グラム以下の箱(ワーク)の処理速度は1分あたり12個。20㌔グラムでも5個対応できる。

高橋吉徳営業部長は、「重量物の持ち運びは腰に負担がかかることから、スタッフが定着しにくい。積み上がるほど辛くなるうえ、ある程度力がなければできない作業。『ただパレタイザーを導入しようにも、従来の装置は高さも装置サイズも大きくて、スペースの確保が難しい』との声を受けて開発した」と話す。

パレット上の積載位置は、置きたいところ(座標)に吸着ヘッドを移動させて記録する「ダイレクトティーチング」で登録する。最大100パータンまで記録できるため、「複数サイズのカートンや仕向け先による積載パターンの違いにも十分対応できる」という。

事前に積載パターンをプログラムに登録しておけば、エアーと電源を接続するだけで、納入した日からすぐに使えるのもポイント。リモート装置を内蔵したことで、技術者が出張しなくても、不具合の原因が分かるようにした。

上面吸着に使用する装置の取付金具は、カートンサイズに合わせて自社で設計。小物軽量の多数個搬送であれば、「処理速度は毎分12個よりも多くなる」そうだ。

「長物の紙袋であれば、すくうような形状にすることで対応できる。一品一様の産業機器を手がけてきた当社にとって、改造や改良はお手の物。装置の標準積載高さ(1550㍉)を超える場合でも、装置高さの延伸で対応できる。カートンの数、サイズ、重量が分かれば、ある程度の見積りが出せる」

パレタイザーの原型は仙台市の某顧客用に開発した専用機。「納入したお客様から『工場見学者の評判も良い。売れるのでは』との後押しもあって製品化した」という。発売後、FOOMA、フードテックジャパンなど、食品関係の展示会を中心に実演した。

しかし、高橋部長は「結果的に食品業界で実績が伸びているものの、業種に関係なく、狭いところで製品出荷している現場に使っていただきたい」と話す。3月に開かれる国際物流総合展(=16面関連記事)では、パレットからの積み下ろしが可能なデパレタイザーも参考出品する予定だ。

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極省を売りにするPSSのパレタイザー「PAL—AH01A」