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新春産業展望 ものづくり2021:PART2

2050年カーボンニュートラルへ
世界の潮流「ゼロ」、日本もようやく

「ついに」というか「ようやく」と言うべきか。温室効果ガスの排出量を2050年までに実質ゼロにする目標を菅義偉首相が打ち出した(昨年10月26日、首相就任後初めての所信表明演説で)。30年先のこととはいえ大風呂敷を広げたなという感があるが、明確で野心的な目標を掲げたことで、脱炭素へのこれまでの取り組みに勢いが増しそうだ。

菅首相はなぜゼロを宣言したか。数値目標について日本はこれまで先進国らしくなく消極的な姿勢を示してきた。小泉進次郎環境相の菅氏への積極的な進言があったからだという。いまや世界の潮流はゼロだ。

だがその達成には当然のことながら痛みが伴う。英国政府の「2050CO2ゼロ」計画の費用は、世帯当たりで累計1千万円を大きく超えるとする報告が発表された(Montford, 2020)。国合計で電力供給に189兆円(世帯当たりで675万円)かかり、省エネ改築費は122兆円(同432万円)。この2つの合計で311兆円(同1107万円)とはじいた(1ポンド=135円換算)。


再エネは安い


注目したいのは再生可能エネルギーのコストが大幅に減少していること。東京大学未来ビジョン研究センターの高村ゆかり教授は、2015年に30年のエネルギーミックスを想定した時から最も大きく変わったことの1つとしてこの点を挙げる。「想定していたより再エネのコストが急速に日本でも下がっている。たとえば太陽光発電で15年に想定していた30年での買い取り価格は、現在の水準だ」(1218日、自然エネルギー財団が開いたパネルディスカッションで。以下同)。高村氏は再エネが増えることの便益が見えてきたことも指摘する。その1つはエネルギー自給率の向上で、13年以降はじめて10%を超える水準に戻った。

国際大学大学院の橘川武郎教授(国際経営学研究科)も「再エネが世界で広がっているのはCO2の問題もあるが、安いから。安くないと思っている日本はガラパゴスだ」と言い切る。そのうえで橘川氏は「(再エネなどの)変動電源が増えてくるので従来型のベースロード電源の価値よりは調整電源の価値が火力発電には求められてくる」と指摘する。

自然エネルギー財団は15年から電源に占める再エネ比率45%を提言してきた。財団の大野輝之常務理事は「20年上期(49月)の日本の電源の25%を自然エネが占めた。20年度全体では2122%くらいになると思うが、いずれにしろ政府の30年目標は10年前倒しで達成される。現状の政策のままでも30%は近く達成されるがそれでは50CO2ゼロをターゲットにするには不十分で、早急に50%に近いところまでもっていく必要がある」と言う。

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再エネ7割が限界?


では再エネ100%という可能性はないのだろうか。ブルームバーグNEFの黒崎美穂日本・韓国分析部門長はさすがに100%は難しいと話す。「経済性だけを重視し、政策の介入がない場合、電力だけでみると50年に再エネは69%、そのうち風力と太陽光が56%を占めるとみている。再エネが100%にならない理由は、欧州を中心とした国々の導入の現状からもわかるが、経済性には限界がある。システムコストを考慮すると7080%が限界である」。そう考える背景にはドイツの現状もある。ドイツではいま太陽光や風力の発電が少ない時間帯はガスや石炭がバックアップ電源として出力を上げているという。