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商社の底力を上げるアプリ、ヤマゼンクリエイトが販売

写真で発注完了、ECに勝る利便性を顧客に

 コロナ禍を経て、ECが生産財の分野にも拡大しつつある。生産財商社のいわゆる「御用聞き営業」も今後、これまで以上に激しくECと競合することになりそうだ。ECの武器は便利さと手軽さ。いち商社が単独でそれを上回る利便性をもつシステムを構築するのは費用面で難易度が高いが、ヤマゼンクリエイトがこのほど、写真を撮って送るだけで発注が完了する受注支援アプリの提供を始めた。顧客の発注作業をEC以上に簡単にすることで、生産財商社の競争力向上を支援する。


 昨今、ECの台頭によって世の中の商流は大きく変化した。家電や事務用品など、実店舗で購入されていた物の多くはすでにネットでの購入が主流に。さらに生産財や建築資材などのBtoB分野にも、EC化の波はじわりと及びつつある。
 そうした背景から開発されたのが、商社・問屋向け受注支援アプリ「Contact-WEB(コンタクトウェブ)」だ。導入した商社はQRコードを使って顧客にアプリを配布。顧客はアプリを立ち上げてほしい商品の型式がわかる写真を撮影し、「送信」をタップするだけで注文が完了する。コメントのやり取りや対応状況などのステータス確認も可能で、注文のほかに見積依頼をアプリで送ることもできる。記者も試しに使ってみたが、ものの数十秒で注文が完了した。写真とそれに添える短いコメントを送るだけという操作感は、我々が普段使うSNSに近い。
 開発を担ったWEB-WINGの羽田敏也代表は「多くの生産財商社が行っている御用聞き営業は、ECの得意とする、言ってしまえば取って代わられる可能性が高いゾーン」と警鐘を鳴らす。とはいえそうした御用聞き営業は商量も多く、この部分がECに流出してしまうと経営に与える影響も大きい。そこでアプリを通じて顧客接点を合理化し、個別の商社が大手のECサイトを上回る利便性を提供することを狙ったという。
 コンタクトウェブの特徴は、導入する商社・問屋とその顧客の双方にメリットを提供できることだ。顧客側では先述のように、発注時の手間を減らしつつ、担当営業を電話で捕まえずともECのようにいつでも注文できる。一方の導入企業は従来、メール・電話・FAXなどで個別に来ていた顧客からの注文を一元化することで、事務処理工数の削減と進捗管理の精度向上が期待できる。そうして空いたリソースを付加価値の高い提案型営業に割き、競争力の強化を図ることも可能になる。

■注文の敷居をECより低く

 コンタクトウェブの提供方法は月額33000円(税込・初期設定費用別)のサブスクリプション方式。アプリのアイコンは自社仕様に変更可能で、導入企業は費用を抑えつつ、自社アプリとして顧客に提供できる。導入企業では実際に月に400~500件の受注をアプリ経由で行っており、以前と比べ営業所への電話が激減する効果があったという。
 また実際の運用で顧客が注文時に送る写真も、型式を記したメモや見積書を写したものなど様々だそう。型式を指定せずに「こんなイメージのものがほしい」とイメージ画像を送ったり、ECサイトの画面を写真に撮り、「この見積もりがほしい」と依頼するなど自由な使われ方をしているようだ。
 羽田代表は「こうした注文はコンタクトウェブがなければ、そのままECサイトに流れていた可能性が高い。しかしECサイトより気軽に使えるアプリがあることで注文の敷居が下がり、『それなら一度見積もりを取ってみようか』と、新たな取引の可能性が生まれます。さらに受注後は従来通りのきめ細かな対応を行うことで、商社の強みを存分に発揮することができます」と力を込めた。

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画像のように、商品の型番がわかる写真をアプリで送ることで注文が完了。製品の画像が無くとも、型式を控えたメモなど伝われば何でもOKだ

(2022年7月25日号掲載)