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福井精機工業、潤滑油染み出す自由形状の樹脂部品

そのオイル、お好きな形状の部品にします

 機械化の宿命ともいえるのが、設備の稼働に伴うメンテナンス作業。昨今のコロナ禍で自動化・無人化を目指す動きは一層加速した感があるが、ロボットの運用1つとっても、そこには人手による様々なメンテナンス作業が必要になる。摺動部へのグリスアップ作業もその1つで、自動化を標榜するうえで避けては通れない課題ともいえる。
 そんなグリスアップ作業を不要にする樹脂部品「CiBs(キッブス)」を、金型メーカーの福井精機工業(大阪市大正区)が開発し、3月から正式受注をはじめた。キッブスの素材は、これまで成形が困難とされてきた超高分子量ポリエチレン。同社では特殊な成形法を用いて超高分子量ポリエチレン内にオイルを練り込んで成形することで、オイルが少量ずつ染み出す自由形状の部品成形を可能にした。「例えば摺動部に部品として組み込むことで、グリスメンテナンスが一定期間不要になる。金型でできる範囲ならどのような形にも成形できるため、ロボットや家電など様々な機械・装置に使えると考えている」(清水一蔵社長)。
 超高分子量ポリエチレンは高い滑り特性や耐摩耗性を持つものの、分子量の高さゆえに溶融流動が難しく、通常の射出成形法では成形が難しかった。福井精機工業では数年前からその成形を手がけており、材料のブレンドを含め全工程を自社で完結できるようになったことから正式受注をはじめた。キッブスには「大概の種類のオイルは練り込める」といい、食用油やアロマオイルにも対応するという。「ユーザーが現在使っているオイルをそのまま使えるため、活躍できる幅が広い。既に食品関係からの問い合わせも多くいただいている」(清水社長)。
 使用環境にもよるものの、連続運転2万時間の耐用試験に合格した実績もあるという。「まずはコストをかけずに試作から始めてほしい」と清水社長。「金型も含め社内で全工程を完結できる当社なら、スピーディに試作品を提供できる」と力強く語った。なお、キッブスは414日から4日間、東京ビッグサイトで開かれるINTERMOLD2021にも出展予定。

2021325日号掲載)