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二九精密機械工業、200万円台の部品判別装置など本格外販へ

アラサミールの外観。これまでパイプを半割りしタッチプローブで測るしかなかった内面粗さを、散乱光をもとにした内部演算の結果から数値化する

世界初・小径パイプの非破壊内面検査も

 まるでバネのような弾性と高い強度を備える、直径1.5㍉ほどのβチタン製細径パイプ。血液分析装置のノズル等に用いられるそれを、世界で初めて工業化したのが京都市南区の二九精密機械工業だ。医療や半導体向けの精密金属部品製造を手掛け、「グローバルニッチトップ企業100選」に選ばれるなど存在感を高める。そして同社がこの4月、専門員を設けて自社開発の検査装置の本格外販に乗り出した。
 製品のひとつは微細部品判別検査装置「クラベルゾウ」。微細な部品の形状・寸法・色を画像処理技術で登録したデータと照らし合わせ、異形部品の混入を見分けるものだ。
 部品の材質に制限はなく、1辺が1㍉程度から対応できる。元は自社製品の品質向上を目的に開発され、実際に同社は長さ1.5㍉・径1㍉の医療向け微細部品の検査に使っている。
 「画像処理を用いた微細部品の検査装置は他にもあるが、価格は概して1000万円以上で、少なくとも500万円は超えるのが相場。しかしクラベルゾウは標準仕様で200万円台と安価だ。条件変更も簡単で、価格で二の足を踏む中小企業も簡単に導入できる」(営業部営業課技術係 伊串達夫氏)
 使い方は部品を重ならないようトレーに載せてセットするだけ。スループットは高価な機械に軍配が上がるが、検査速度は1部品あたり約2秒と、中~小ロットなら問題なく対応できる速さだ。「肉眼での検査は大変な作業。クラベルゾウは検査員の負担軽減と業務効率アップを両立でき、全数検査を求める昨今の流れにも合致する」(営業部営業課 杉本浩氏)
 同時に本格的な外販を始めるのが、世界初の小径パイプの内面粗さ測定装置「アラサミール」だ。対象は内径0.45~3㍉の極細管で、セットした管にファイバースコープを挿入し、光の反射具合をもとに内面粗さをRa0.02から演算する。管内に異物があっても、その影響を差し引いた値を算出可能。小径パイプの内面検査は抜き取りによる破壊検査しか方法がなかったが、アラサミールなら非破壊かつ全数検査が可能になる。杉本氏の言葉を借りれば「世の中にこれしかない画期的な設備」だ。
 営業部営業課の深谷明彦氏は「医療・分析分野では注入する液体の量が安定しなければ正しい結果を導けず、必然的にパイプの内面粗さは重要なファクターになる」と話す。価格は標準で1200万円だが、リースや受託検査など柔軟な選択肢も用意する。パイプのセットを自動化すべく、さらなる改良も進行中だ。
 これら検査装置の本格外販は4月からだが、展示会のたびに30~40件の引き合いを集めるなど注目を浴びている。特にアラサミールの引き合いが好調で、さらに直径1㍉程度の小径パイプの表面や内面の微細な傷や亀裂を、渦電流の変化で検知する装置「キレツミール」も開発中だ。部品製造のニッチトップ企業が独自の検査装置で攻勢を強める。

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左から営業部営業課技術係 伊串達夫氏、営業部営業課 杉本浩氏、営業部営業課 深谷明彦氏。クラベルゾウ(中央)を囲んで

2023610日号掲載)