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東亜精機工業、自動化やEV向け治具に勝機

EVのバッテリケースなど大型ワークが増加している

生産効率上げる軽量治具にも注目

 「昨年まで国内は自動車業界向けにレトロフィット用の治具や自動化、効率化治具の受注で忙しくさせてもらっていましたが、やはり各社とも新規でのエンジンやミッションの開発をストップし、EVにシフトしているせいか、当社が得意とする領域の仕事は徐々に減ってきている印象を受けます」
 こう語るのは、大阪府の加工用治具専業メーカー・東亜精機工業の原田育彦営業部長。同社は大正14年の創業以来、航空機部品やゲージ製作で得た知見をベースとした治具設計・製作におけるスペシャリスト。同社の治具は国内外の自動車メーカーをはじめ、半導体、電機メーカーなど多くの製造現場で採用されている。

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東亜精機工業・原田育彦営業部長(左)と上田崇氏


 その主力ユーザーである自動車業界からなかなか景気のいい話が出てこない現状、同社は今後も見通しは決して明るくないと見ている。
 「自動車の動力源がガソリンエンジンからモーターに変わる過渡期になっています。数年前からEV化が進むと言われていましたが、最近はメーカーサイドが加速度的にEVへの移行を進めている印象です。設備面においてもエンジンやトランスミッションの新規開発による設備投資の話は一切聞きません」(原田部長)
 一方、EV関連パーツ向けの治具ニーズは徐々に高まっているという。同社営業部の上田崇氏が直近の自動車業界からの引き合いについて語ってくれた。
 「最近ではEV向けeアクスルの関係部品、バッテリ周辺パーツ加工向けの治具が求められています。EVやハイブリッド車に使用されるパーツは軽量化を意識した薄肉のワークが多く、切削時のビビリ対策を考慮した治具の相談も増えています。また、バッテリ周りのパーツには大型ワークも多く、治具も大型のものを求められる傾向にあります」
 続けて、「エンジン生産量の減少に伴い、各メーカーとも設備の集約を進めています。様々な車種の生産に対応できるような超汎用ラインの話も出てきており、こうした生産現場に向けた治具が求められています」と語る。
 また、国外に目を向けると、まだまだエンジン需要は少なからずあるようだ。
 「中国を抜いて人口世界一になったインドの自動車生産が特に伸びていますね。なかでも現地で絶大な人気を誇るマルチスズキさんはかなり好調のようで、当社も様々な受注を頂いております」(原田部長)

■ロボ不要で機内段替え

 また昨今では、業界を問わず自動化やロボットに対応した治具に対する引き合いが増えているという。
 「製造業全般に言えることですが、とにかくどこも人が集まらないので、自動化やロボットを活用せざるを得ない状況になっています。特にロボットと加工機を繋ぐ工程間で必要な治具のオーダーが増えています」(上田氏)
 一方で、金属加工における自動化やロボット活用において、無視できないのが重量の問題だ。近年のワークの大型化などで、工作機械のテーブル荷重に過負荷がかかってしまうケースや、ワーク搬送の自動化において治具にも軽量化が求められているという
 「当社では従来の鉄製の治具に代わって、アルミ製の治具を提案しています。なかでも超々ジュラルミン製の治具は鉄製の治具に比べて同サイズでも重量は約半分です。超々ジュラルミンはアルミニウム合金の中で最も強度が高い素材で、鉄製の治具に勝るとも劣らない強度を有しています。治具の軽量化は、自動化の実現はもちろん、リードタイムやランニングコストの削減といった生産性向上にも繋がります」(原田部長)
 また同社では、ロボット導入が難しい生産現場に向けた治具ソリューションも提案している。なかでも工作機械内で子治具を自動で段替えできる「自動段替えシステム治具」は、ワークの機内加工自動化を実現する。
 ロボットは高額ですし、ワークが変わるたびにティーチングを行う必要がありますが、当社の『自動段替えシステム』なら、ワークの変更にも子治具のみの新規作成で容易に加工ができます。多品種少量生産の現場に向くとともに、ロボットや自動搬送といった自動化に比べトータルでの導入・ランニングコスト削減に大きく寄与できます」(原田部長)
 同製品は昨年の発売以来、マシニングセンタ向けの新たな自動化システムとして注目を集め、順調に販売を拡大しているという。

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東亜精機工業の「自動段替えシステム」

2023825日号掲載)