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オークラグループ3社、ワン・オークラ体現する新社屋 

オークラ輸送機(株)

「選ばれるオフィス」で人材の獲得へ

 オークラグループ3社(オークラ輸送機・オークラサービス・上野電気工業)が入居する「オークラ大阪ビル」が7月に稼働をはじめた。梅田にも近い阪急三国駅から徒歩圏内にあり、ここを本社とする上野電気工業は「採用の中核拠点としたい」と意気込む。EC需要の高まりで好景気が続くマテハン業界だが、旺盛な需要に応えるためにも優秀な人材の確保は必要不可欠。フリーアドレスを徹底した働きやすい新オフィスでグループの魅力を伝え、採用競争に勝ち抜く構えだ。オフィスのこだわりからグループの連携戦略まで、上野電気工業の倉松幸司社長に詳しく話を聞いた。

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上野電気工業の倉松幸司社長

 広々とした執務フロアには2台のモニタを配したデスクがゆったりと並ぶ。フリーアドレス制のため、ノートPCがあればどこでも3画面で仕事ができる贅沢な環境だ。実際に従業員は各階にあるカフェスペースや5階のラウンジも含め、思い思いの場所で自由に働いているという。  
「あまりに快適すぎて以前とは業務効率が段違いです」。上野電気工業・倉松幸司社長の笑顔が満足感を物語っていた。
 今年7月に稼働をはじめた「オークラ大阪ビル」はオークラグループ3社が集う関西の中核拠点だ。45階はオークラ輸送機が営業・技術拠点として利用。物流機器の据付とメンテナンスを担うオークラサービスは3階に入り、2階はオークラサービスの子会社で電気関連の設計・製造・調整を手がける上野電気工業が本社として使う。1階では上野電気工業が制御盤製作や試験を行うほか、エアーレスで動くパレタイズロボットなどを展示するショールームもある。こうして並べるだけでもこのビルの多機能さは充分伝わるだろう。

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5階のラウンジはグループの交流拠点としても機能する

 もともとこの地は上野電気工業の本社だったが、同社は2020年にオークラグループに参画。21年にオークラサービスと上野電気工業の創業50周年が重なり、周年記念事業のひとつとして手狭だった拠点の建て替えが持ち上がった。経営の効率化や連携強化の観点で、近隣に営業拠点があったオークラ輸送機もそこへ合流。こうして約12億円を投じたオークラ大阪ビルが完成した。
 拠点を刷新した狙いのひとつはグループシナジーの強化だ。そもそも上野電気工業はグループに参画して約3年で、オークラ輸送機の孫会社にあたる。コロナ禍もあってシナジー効果を生むのに時間がかかっていたが、今や状況は一新されたという。「移転して1カ月で予想以上の効果が出ています。上野電気工業へのオークラグループからの受注が加速度的に増え、仕事の流れがずいぶん変わってきました。カフェエリアでも自然と交流が生まれます。長い目で見たシナジーは計り知れません」(倉松社長)
 上野電気工業は自動車メーカーなど大手の生産ラインで知見を積んできた専門家集団。電気関連の設計・製作・調整を行う一気通貫体制が強みで、今まで外注していた仕事を同社が担えば対応速度を早めるメリットがある。制御盤製作の進捗確認やテストも階段を下りるだけで済むため、調整前にシステムの完成度を高めることもできる。もちろん、グループ外へのキャッシュアウトが減る点も大きな効果だろう。

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1階のショールームでは2つのロボットシステムを展示する。画像はエアーレスのパレタイズロボット。SDGsの観点からエアーレスを求める現場が増えており、それに応えて開発したという

■EC関連需要は高原状態

 オークラ大阪ビルには働きやすさに通ずる仕掛けが多い。イラストレーターによるポップな絵が壁を彩り、執務エリアは開放的かつゆったりしたレイアウトで、WEB会議スペースとフリーアドレスデスクが社員の自由な働き方を後押しする。オークラグループではコロナ禍前から働き方改革を推進しており、同ビルもその流れに沿ったものだ。
 オークラサービス・経営企画部の伊角賢一部長は「自分たちで言うのもはばかられますが」と前置きし、こう語る。「我々のグループは非常に良い会社だと自負しています。しかし、BtoB企業であるがゆえに一般消費者の方々にはその良さがなかなか伝えられない。そこで、我々オークラグループの良さが少しでも具現化できれば、と考えたのが、自社ビル『オークラ大阪ビル』の建設です」
 新たなビルに力を入れる狙いは人材採用にもある。近年は物流センターの新設案件の増加を背景にオークラグループの売上高も好調に推移し、オークラサービスも多忙な状況が続く。上野電気工業が求める電気系人材も九州の半導体工場新設などに引く手あまたで、優秀な人材の確保は3社ともに急務だった。「すでに複数の面接を行いましたが、いずれも新社屋を気に入っていただき採用にもつながっています。今後もリクルート拠点として最大限活用する方針です」(倉松社長)
 オークラグループでは「ワン・オークラ」を掲げ、グループシナジーの強化を打ち出している。「営業、設計、製造をオークラ輸送機が、上野電気工業が電気系の設計や製造を担い、オークラサービスが工事とサービスを行う。サービスが良ければ次なる引き合いにもつながるため、この良いサイクルを我々がワンチームとなって回すことが重要です。まだまだ道半ばですが、オークラ大阪ビルを軸にサイクルを強力に推し進めます」(倉松社長)

2023825日号掲載)