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大東精機、独自の福利厚生で本格社内ジムが好評稼働中

会員制ジムさながらの機器を備える「DAITO GYM-CLUB」。利用回数上位者は毎月ランキング形式で発表され、それが社内コミュニケーションの種にもなる

尼崎で進む自然体の健康経営

 健康経営の重要性が叫ばれるようになった。福利厚生の一環で社員が通うスポーツジムの費用を一部負担する企業も増えてきたが、社内にトレーニングジム、しかもかなり気合いの入ったものを作ってしまう例は、全国的に見てもかなり珍しいのではないか。本格的な社内ジムを社員とその家族、さらには友人にまで無料で開放するのは、バンドソーのトップメーカーとして知られる大東精機。尼崎市の本社を訪ねると、ジムを核に自然体で進む働き方改革の姿が見えてきた。


 大東精機の本社敷地内には「B棟」と呼ばれる5階建ての建屋がある。完成から約40年が経過したこの建屋の内部はこの23年のあいだに、集中的な改装によってガラリと生まれ変わった。4階のほとんど使われていなかった部屋を利用する形で、最新のトレーニング器具をずらりと並べたかなり本格的なジム「DAITO GYM-CLUB」が誕生したのだ。
 ただマシンを無造作に並べたのではない。内装はモノトーンを基調にしたシックな雰囲気で、まさに高級感のある会員制ジムといった趣。利用状況は顔認証システムで管理され、万一の事故を防ぐ緊急停止システムもある。利用者は十数台の本格的なマシンから自分に合ったものを選び、窓の外を眺めながらのびのびと体を動かせる。開放時間は6時半から22時までで、休日も自由に利用可能。さらに社員同伴ならその家族と友人も使用できるというから驚きだ。これは社員とその家族の健康にも留意すべきという、同社の掲げる「健康経営」の考えに基づくもの。実際に毎日30人以上がこのジムで心地よい汗を流している。
 取材に応じてくれたPR室マネージャーの岡西計太氏も、社内ジムの完成を機にトレーニングを始めたうちの一人だ。いち利用者の立場として使用感を尋ねると「ひとことで言えば満足。ビギナーから玄人までを幅広くカバーできる良いバランスのマシン構成だと思います」と明るい声が返ってきた。
 それもそのはずで、マシンの選定はジムでのアルバイト経験も持つ経営企画室マネージャーの杉本直也氏が、メーカーの指導も仰ぎながら「しっかり全身運動ができるラインアップを厳選している」のだという。ちなみに杉本氏も例に漏れず、社内ジムのヘビーユーザーだ。
 巷の会員制ジムさながらの設備が無料で使えるとあって、ジムの稼働率は高く、女性ユーザーも定着している。同社では勤務中に「健康休憩」を取ることも認められており、ジムで体を動かしてリフレッシュした状態で仕事を再開することで業務効率も高められる。人材採用にもプラスの効果があるようで、杉本氏は「『ジムがあるのでこの会社に来ました』と言う人がいるほど、就職先選びの決め手になっていると感じます」と手ごたえを語った。異例ともいえる本格社内ジムは今のところ、多角的な成功を収めているようだ。

■働きやすさと効率の二刀流オフィス

 ユニークな取り組みである社内ジムが目を引きがちだが、実のところ大東精機が目指すのは健康促進だけにとどまらない、全体的なワークライフバランスの向上だ。そこで同社はジムの設立と機を同じくして、B棟や本社本館など他の建屋やフロアの改革にも着手。デザイナーの知見と社員の意見をミックスし、働きやすい新たなオフィスフロアを完成させた。
 例えば食堂として使われていたB棟の5階は、改装によってフリーアドレス制の開放感のあるオフィスに生まれ変わった。コンセプトは「活発なコミュニケーション」。ここでは開発部やPR室などクリエイティブな業務に従事する人々が働く。何気ない会話から生まれる閃きを仕事に活かすことがフリーアドレス制の狙いだ。逆に集中したいときにはイヤホンで好きな音楽を聴きながら仕事をすることも認められており、オン・オフを切り替えながら柔軟に仕事ができる。

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(写真=B5階の執務フロアは開放的で自然な会話が生まれやすい)


 一方、B棟の3階は設計部署の執務フロアだ。ガラスの防音壁に覆われた静かな空間は、同じ棟とはいえ5階とはかなり趣が違う。聞けば、決められた納期の中で確実な設計業務を行うために、静かで集中できる環境を整えたのだという。
 大東精機で進む一連の改装プロジェクトは最初から完成図があったわけではなく、それぞれのフロアを実際に使う部署が意見を出し合いながら形にしたもの。だからこそ使い手の意に沿ったものになっており、働き方改革がごく自然体で進んでいる。
 岡西氏は改装前を振り返りつつ、こう話す。「我々はメーカーですので、元々はいわゆる作業着が会社のユニフォームでした。しかし改装を機に、事務職はカジュアルな服装での勤務が認められたんです。それが私のように長く勤めている者からすると、革命でしたね。徐々に社内の雰囲気も変わり、次々に改装のアイデアが出てくるようになりました」
 本社の改装はひと段落ついたそうだが、杉本氏は「『こんなこともやっていいんだ』と、社員のマインドが確実に変わったと思います」と話す。この自由な空気感なら、働きやすさに通ずるさらなる施策が生まれる日も近いかもしれない。

20231025日号掲載)