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キャステム、全長0.2ミリの超微細3D福山城制作がSNSで話題

全長0.2ミリの超微細3D福山城。髪の毛(左)との比較

古くからの技術ロストワックスが3Dプリンタで進化
[超微細3D光造形 ロストワックス製法] 広島県福山市

 キャステム(広島県福山市)はよくバズる。特に昨年築城400年を迎えた福山城の機運を盛り上げるべく、全長0.2ミリ、約17万分の1スケールで超微細3D福山城を制作し大きな話題となった。京都先端科学大学と共同研究を進める世界最高精度の3D光造形装置Nanoscribeシステムを利用し、超微細3Dプリントサービスを行う。
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戸田有紀専務

 積層2光子重合の3D造形技術とサブミクロンの解像度で固まる性質を持つIP樹脂を用いることで、従来の製法では不可能な形状や極小サイズの造形を実現する。最小寸法はX・Y軸が0.2ミクロン、Z軸が0.3ミクロンだ。
 微細なレンズ(マイクロオプティクス)による通信性能向上や、毛細血管を止血できる医療用分野のクリップなど用途は広い。「簡単に言うと紫外線で硬化する樹脂に0.2ミクロンのレーザーを照射して造形していく。造形自体よりデータ作成が難所だ。3DCADデータからGコードを書き出すが、例えば四角形を造形する条件で三角形にレーザーを照射すれば先端が熱で反る。薄い、厚い、細いなど形状に合わせてレーザーの出力、照射時間、角度などの条件を、職人的な経験値を踏まえて設定していく」(桝谷周平上席主任)とし「2年間、研究データを蓄積しており最終的には自動化を目指したい」(同)と語る。
 最新技術だけでなく、同社は古くからある鋳造技法の「ロストワックス製法」を独自のノウハウで進化させ、一般産業分野の精密鋳造では国内トップシェアという。
 金型(アルミ型)にワックス(ロウ)を注入して形状を作る。ロウをセラミックでコーディングしたのち、熱処理するとロウが溶けてなくなり、セラミック鋳型が焼成される。それに溶融させた金属を注湯するのが同製法だ。鉄系、ステンレス系、銅、アルミなど幅広い金属に対応でき寸法精度が高く、面粗度が美しいのも特徴だ。
 同製法ではワックス(ロウ)模型を作るため必要な金型製作(費)を必要とするが、3Dプリンタを用い、樹脂素材模型を製作することで金型レス(型費不要)で鋳造品を一個から製造対応する『デジタルキャスト』の提案を推し進めている。
 最小サイズは約4センチ、最大サイズで50センチ程度まで鋳造が可能だ。この技術は“ホリエモンロケット”の重要部品にも使われた。複雑三次元形状が得意で、ロケットなどの丸いダクト状の構造は、試作段階では切削加工した部品を溶接でつなぎ合わせることが多いが、鋳造なら一体化でき剛性もあがる。またコストも大幅に下がるという。

■最新技術で平和の折り鶴量産

 最新デジタル技術と同社の精密鋳造技術を掛け合わせ「広島の企業として本当に意義深い」と戸田有紀専務が語る事業が行われた。12歳で夭折した原爆被爆者の佐々木禎子さんが生前最後に折った折り鶴を、3Dスキャンしたデータを元にステンレスで忠実に再現し量産にこぎつけた。これがG7首脳が平和記念資料館で決意を示した机上に置かれ、メディアが世界中に配信した。
 同専務は「過去二カ年、売り上げを一割ずつアップさせており、今期の売上目標100億は達成できると思う」と自信を見せる。増加する受注に対して17年に碌々産業Android2、18年にDMG森精機DMU50、22年に金属3DプリンタTruPrint1000、23年(予定)に西部電機超精密ワイヤ放電加工機MEX15など新規導入し、設備投資も積極化する。また25年3月稼働を目指しベトナムに7カ所目の海外工場を計画している。

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原爆被爆者の佐々木禎子さんの折り鶴をステンレスで再現

(2023年8月10日号掲載)