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人とくるま展、EV向け提案加速

ジヤトコの佐藤社長と軽自動車向け平行軸e-Axle

従来技術・製品の見直しも

 526日までの3日間、パシフィコ横浜(神奈川県横浜市)で「人とくるまのテクノロジー展2023YOKOHAMA」(主催=〈公社〉自動車技術会)が開催された。自動車・部品・材料メーカーなど499社が出展し、63810人が来場した。EV(電気自動車)向けの提案に注目が集まった。
 自動車用変速機のトップメーカー・ジヤトコはe-Axleeアクスル:モーターやインバーター、減速機などを一体化したEV用駆動ユニット)のコンセプトモデルを2つ初公開した。軽自動車からコンパクトカーまでの搭載を想定する「平行軸e-Axle」は高回転モーターとコンパクトなギアで15インチのノートパソコンと同等サイズまで小型化。ピックアップトラックや商用車への搭載を想定する「変速機能付きe-Axle」は変速機を使うことでモーターのサイズアップを抑制し、小型化とコスト低減に貢献する。同社の佐藤朋由社長兼CEOは「電動化が加速するなかEVは小型車・中型車のセグメントからコンパクトカー、軽自動車、高性能車やピックアップトラックへと広まってきている」とし、電動化が新しいビジネスチャンスとなるとの認識を示した。
 自動車関連システムや部品を手掛けるヴァレオジャパンは、仏ルノーと開発中のEV駆動用「巻線界磁形同期モーター(EESM)」を日本初公開した。レアアースや磁石を使用せず、永久磁石同期モーター比でCO2排出量を30%削減できる。同社の高密度の銅を使用するノウハウにより高効率化を実現する。200㌔ワット電動モータを2027年の量産を予定する。

■工作機械向け部品を転用

 新技術だけでなくEV化で注目される製品・技術もある。日本特殊陶業が提案したのがセラミック製のベアリング用真球ボール。数十年前から高剛性や低熱膨張性、軽量、摩擦係数が低いことなどを理由に工作機械用スピンドル駆動向けとして活用されてきたが、昨年ごろからEV向けが急伸している。性能向上を目指すEVの駆動モーターにはより高電圧のインバーターが使われるようになってきている。ベアリング内を大きな電流が通過することで軌道面に波板上の電食が発生してしまうため、絶縁性の高い同製品への需要が伸長している。現在、生産工場の増強を進めており、さらに投資をする可能性も示唆した。
 住友重機械工業が展示した製造システム「STAFSteel Tube Air Forming)」も16年に開発・発表したもの。パイプ材(鋼管)からフランジ付き連続異形閉断面を成形できるのが特徴。従来のホットスタンピングでは複数枚の鋼板を板金プレスで別々に加工し、それを接合する必要があった。そのため、フランジ(つば状の部分)は断続的に接合された状態となり、剛性を高めることが難しかった。STAFは一本のパイプ材をフランジまで一体で成形できるため剛性を向上でき、工程も簡略化できる。16年の発表当初よりも複雑な形状を作ることができ、厚みを薄くした約30%軽い材料でも従来品と同等の剛性を確保できるなど、EVの車体向けに有効となりそうだ。昨年5月には初めて自動車の新製品開発に使用する試作部品の開発・製造をするトピア(三重県鈴鹿市)にシステムを納入するなど、量産車採用に向けた取り組みを加速させている。

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住友重機械工業の STAF技術で作ったAピラー。フランジを片側だけにすることで、ピラーの幅を狭くできる

2023610日号掲載)